個人事業主をしていますが、売り上げや経費などの帳簿をつけていません…。確定申告の申告期限に間に合う気がしないのですが、遅れるとどうなるのでしょうか?
配信日: 2025.01.16

期限に間に合わない場合、延滞税や加算税といった税金が課されるほか、控除が減少することで税負担や保険料負担が増えてしまいます。確定申告の期限を守らなかった際のペナルティは決して軽くありません。
本記事では、期限を過ぎた場合のリスクや対処法、そして期限内に間に合わせるための具体的なアドバイスをお伝えします。

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
確定申告に遅れると課せられる2つのペナルティ
確定申告に遅れると、ペナルティが発生します。具体的にどういったものか見ていきましょう。
延滞税と加算税が課せられる
確定申告期限を過ぎたときにまず課されるのは「延滞税」です。法定納期限(確定申告締切日)の翌日から完納する日までの日数に応じて課税されます。
税率は本来納める税金額に対して、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの期間については年2.4%、その翌日以降は年8.7%(それぞれ2022年1月1日から2025年12月31日までの期間)となっており、決して小さな金額ではありません。
加えて課されるのが、「無申告加算税」です。確定申告を忘れた(しなかった)ときに課される税金で、税務署に自主的に期限後申告を行えば税率は本来納める税金額に対して5%の税率で済みますが、税務署から指摘を受けてしまうと最大15%となります。
なお、無申告加算税は「法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に期限後申告を行うこと」「期限内申告をする意思があったと認められる場合に該当すること」という要件を満たせば免除されるため、遅れても1ヶ月以内には申告と納税を済ませたいところです。
延滞税や無申告加算税の性質から、もし確定申告期限に間に合わない場合でも、1日も早い期限後申告が必要なことが分かります。
青色申告特別控除の金額が減る
青色申告を行う個人事業主は、各種条件を満たすことで、「65万円」「55万円」「10万円」のいずれかの青色申告特別控除を受けられます。しかし、55万円以上の控除を受ける条件の1つにあるのが、「確定申告期限までに報告書を提出すること」です。
確定申告期限を過ぎると控除額が10万円に減り、所得税と住民税を合わせた税負担が大きく増加します。例えば、所得税率が5%、住民税率が10%の合計15%の税率で計算すると、55万円の控除減少によって8万2500円の負担が発生する計算です。
さらに、国民健康保険の保険料の計算に使う所得額も大きくなるため、保険料の負担も増えてしまいます。
こういったことを防ぐためにも、確定申告期限を守ることは大切なのです。
申告期限に間に合わせるためのアドバイス
前記した通り、確定申告は期限に間に合わせることが何より重要です。100%完璧なものでなくても期限内に出すことを優先しましょう。
最優先すべきは、売上(収入)の計算です。収入に漏れがあると過少申告となり、後から延滞税や過少申告加算税といったペナルティが課されます。報酬の振込口座や請求書などを確認し、ここだけは確実に漏れがないように仕上げなければなりません。
経費や控除の計上については、「時間が許す限りでいい」と割り切ることも大切です。もちろん全ての項目を完璧に整理するのが理想ですが、期限が迫っている場合は、多少の漏れがあっても申告自体を期限内に完了させることを優先します。
仮に経費が漏れていたとしても、「税金の払い過ぎ」になるためペナルティはないからです。また、確定申告期限後も5年以内であれば、漏れていた経費や控除を計上し更正の請求を行うことで、払いすぎた税金の還付を受けられます。
確定申告は期限を守ることが何より大切
確定申告の期限を守ることは、延滞税や加算税といったペナルティを回避し、控除を最大限に使うためにも欠かせません。期限を過ぎてしまうと税負担が増えるだけでなく、余計な手間やストレスも発生します。
完璧を目指しすぎず、売上(収入)の計上など必ずすべきことに注力しつつ、期限内に申告を完了させることを最優先に考えましょう。期限後に修正することも可能なため、期限を守って着実に対応することが大切です。
出典
国税庁 No.9205 延滞税について
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
国税庁 No.2072 青色申告特別控除
国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士