アルバイトをしながら大学に通っています。「勤労学生控除」という制度があると聞いたのですが、正社員でなくても申請できますか?
配信日: 2025.01.22
では、皆さんは「勤労学生控除」という言葉をご存じでしょうか? 本稿では、勤労学生控除について見ていきます。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
そもそも勤労学生とは?
勤労学生控除の「勤労学生」とは、どのような学生をいうのでしょうか?
納税者自身が勤労学生の場合は、一定金額の所得控除を受けることができ、これを勤労学生控除といいます。
控除対象者の要件としては、学校教育法に定められた学校に通っている児童・生徒や学生が対象です。つまり、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校です。また専修学校は、高等課程も専門課程も、どちらも対象になりますが、対象になる学校の要件がいくつかあります。
例えば、1年間の授業時間数が800時間以上あること等です。なお、職業訓練学校の学生も対象になる場合があります。
働き方は?
では、どのような働き方が対象になるのでしょうか?
給与所得者であればよく、正社員やパート、アルバイト等、雇用形態は問われません。しかし、いわゆる業務委託や個人事業で得た事業所得は、勤労学生控除の対象外です。
所得にも要件があるの?
まず、「合計所得金額が75万円以下」という要件があります。収入がアルバイトの給料だけという方の場合、アルバイトで得た所得が75万円以下(年収では130万円以下)で、先述の勤労学生に該当すれば、勤労学生控除の対象になります。
しかし、アルバイト等の給与所得以外の所得が10万円を超えてしまうと、勤労学生控除の対象にはなりません。給与所得以外の所得とは、例えば事業所得です。
アルバイト等で得た給与所得が70万円、事業所得が5万円という方の場合は、合計所得金額が75万円以下かつ給与所得以外の所得が10万円以下ですから、勤労学生に該当すれば、勤労学生控除の対象になります。
肝心の控除額は?
勤労学生控除の控除額は、27万円です。もし、アルバイト等の年収が130万円なら、給与所得控除額の最低が55万円となり、他に所得がなければ合計所得金額は75万円です。
ここから、勤労学生控除額(27万円)や基礎控除額(48万円)を引くと、所得税の課税所得金額はゼロになります。
どうやって申告するの?
この勤労学生控除は、年末調整でも申告ができます。もちろん、確定申告でも可能です。
年末調整で申告する場合には、「扶養控除等(異動)申告書」に勤労学生控除に関する事項を書いて、勤め先に提出します。なお、専修学校や職業訓練学校で勤労学生に該当する場合には、学校が発行する証明書が必要な場合もあります。
まとめに代えて
冒頭に述べた「103万円の壁」に比べると、勤労学生控除は知名度があまり高くないと思われます。しかし、103万円の壁に比べると、壁が少し低く感じるのではないでしょうか? 該当する可能性のある学生の方は、申告を検討してみましょう。
出典
国税庁 No.1175 勤労学生控除
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役