先日定年退職した夫の「退職所得」が「源泉徴収された額」を上回っていたのですが、この場合「確定申告」は必要ですか?
配信日: 2025.01.27
当記事では、退職金を受け取った際に確定申告が必要かどうかについて解説します。退職所得控除額の考え方や確定申告が必要なケースについてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
「退職金」は原則として確定申告は不要だが、必要なケースもある!
退職金を受け取っても、原則として確定申告は不要です。なぜなら「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先の企業に提出すれば、企業側が適正な所得税・住民税・復興特別所得税などを計算して源泉徴収するからです。
そのため、基本的には退職金を受け取った納税者が自ら確定申告を行う必要はありません。ただし、後述するいくつかのケースでは、確定申告が必要になるので注意しましょう。
そもそも「退職所得」の控除額はどうやったら分かるの?
まず、退職所得とは退職金の内の課税対象となる金額であり、国税庁によれば以下の式で算出できます。
・(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
退職所得の計算式から分かるとおり、退職金の金額すべてが課税の対象となるわけではありません。退職金から控除する額として「退職所得控除額」が設けられています。退職金は長年の勤労に対して一時金として支払われる報酬です。
そのため、「退職所得控除」を受けられることや、ほかの所得と分離した課税など、税負担が重くなりすぎないように配慮されています。退職所得控除額は国税庁のWebサイトに情報が掲載されており、具体的には以下の表1の通りになります。
表1
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」を基に筆者作成
例えば、勤続25年のAさんが退職金を受け取った場合、退職所得控除額は次の通りです。
・800万円+70万円×5年=1150万円
もし、Aさんの退職金が1150万円以下であれば退職所得控除額よりも小さいので、税金は発生しません。一方、Aさんの退職金が1150万円を超えていれば、企業側が退職所得の金額や税額を計算して源泉徴収します。
「退職金」で確定申告が必要な主なケース
退職所得が退職所得控除額を上回った場合、所得税などは源泉徴収されるため、原則として確定申告の必要はありません。しかし、いくつかの例外もあります。退職金を受け取った際に確定申告が必要になる、代表的な事例をまとめてみました。
所得控除を受けたい方
退職した年に特定の所得控除を受ける予定がある方は、確定申告が必要です。所得控除とは納税者の生活状況に合わせて、所得額から一定の金額を差し引く制度をいいます。所得控除には医療費控除・寄附金控除・生命保険料控除など、さまざまな種類があります。
例えば、年間に一定額を超える医療費を負担した方であれば医療費控除を、ふるさと納税を行った方であれば寄附金控除を受けられるかもしれません。こうした所得控除を適用するためには、確定申告を実施しましょう。
公的年金などの合計が400万円を超えている
退職金を受け取った方が年金受給者で、国民年金や厚生年金といった公的年金などの合計収入金額が400万円を超える場合には確定申告が必要です。公的年金には確定申告不要制度が設けられていますが、400万円を超えている方は対象に含まれません。受け取った年金について全て明記して、確定申告の手続きをしましょう。
なお、民間の生命保険会社による個人年金保険は公的年金等に係る雑所得以外に該当するため、公的年金などの収入金額の合計額には含まれません。
年金所得がある方で他の所得金額が20万円を超えている
退職金を受け取った方で公的年金などの合計収入金額が400万円以下であっても、そのほかの所得金額が20万円を超える場合には確定申告が必要です。
そのほかの所得には、給与所得・雑所得・一時所得などが該当します。1年間のうち、そのほかの所得金額の合計が20万円を超える場合には、退職金の金額も含めて確定申告を実施しましょう。特に個人年金保険で受け取る年金額が年間20万円を超える場合は注意が必要です。
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していない
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していない場合は、退職金の20.42パーセントの所得税および復興特別所得税が自動的に源泉徴収されます。
源泉徴収はされるため確定申告は必須ではありませんが、確定申告を行うことで払い過ぎた所得税などを取り戻すことができるケースも少なくありません。退職金などの金額によっては、確定申告を行うことをおすすめします。
まとめ
退職金は企業側が源泉徴収を行うので、退職された方の確定申告は基本的には必要ありません。ただし、所得控除を受けたい方や、公的年金などの合計が400万円を超えている方などは確定申告が必要です。確定申告には期限が設けられているので、手続きが必要な方はゆとりを持って準備を進めましょう。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー