個人事業主1年目、確定申告が初めてで不安です……。これだけは押さえておくべき基本はありますか?
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
個人事業主が確定申告を行う際の確定申告の手続きの流れ
1. 必要書類を準備する
確定申告に必要な書類は、適切に管理・準備することが重要です。
(1)収入に関する書類
・売上帳:すべての売上金額を記載した帳簿
・請求書・領収書:取引先に発行した請求書や、受け取った支払いの記録
・通帳のコピー:銀行口座の入金記録
(2)経費に関する書類
・領収書やレシート:事業に関連する支出のみ
・交通費の詳細:電車代、ガソリン代、高速道路料金など
・事務所にかかる経費:家賃、光熱費、通信費
(3)その他の書類
1)源泉徴収票(顧客が源泉徴収を行った場合)
顧客からの支払いの際には、顧客が所得税の源泉徴収を行う場合と行わない場合があります。顧客が源泉徴収を行った場合は、その金額を申告書に明記する必要があります。そして源泉徴収税額と本来納めるべき所得税が比較され、個人事業主はその差額を納付するか、税務署から還付を受けます。
2)健康保険料や国民年金保険料の控除証明書、生命保険料・地震保険料控除証明書
これらの控除証明書は、各種所得控除を申告するために必要です。
2. 会計帳簿の作成
確定申告を行うためには、1年間の収支を正確に帳簿に記録する必要があります。
(1)青色申告
複式簿記での帳簿作成が必須であり、仕訳帳や総勘定元帳を作成する必要があります。会計ソフトを利用すると効率的でしょう。
(2)白色申告
単式簿記で記録可能です。青色申告に比べて簡易的な収入帳・支出帳を作成するだけで済みます。
(3)ポイント
書類をきちんと整理することで、税務調査に備えやすいでしょう。特に領収書は保管期限を守らなくてはなりません。個人事業主であれば、原則として青色申告の場合は7年、白色申告の場合は5年保管します。
3. 収支を計算
事業の収入と経費を正確に把握し、以下の計算を行います。
(1)計算の流れ
収入合計=売上金額の合計
必要経費=事業運営のために支出した費用
例:事務所家賃、仕入れ費用、交通費、通信費、消耗品費(コンピューター購入費など)
所得=収入合計-必要経費
課税所得=所得-各種控除(基礎控除、扶養控除、青色申告特別控除など)
(2)控除の種類
1)所得控除
所得控除には次の15種類があり、申告できるものを漏れなく申告することが、節税につながります。
・人的控除(8種類)
(ア)基礎控除
(イ)配偶者控除
(ウ)配偶者特別控除
(エ)扶養控除
(オ)障害者控除
(カ)寡婦控除
(キ)ひとり親控除
(ク)勤労学生控除
・物的控除(7種類)
(ア)社会保険料控除
(イ)生命保険料控除
(ウ)地震保険料控除
(エ)小規模企業共済等掛金控除
(オ)医療費控除
(カ)雑損控除
(キ)寄附金控除
2)青色申告特別控除
所得税の青色申告特別控除には、10万円、55万円、65万円の3種類があります。青色申告のメリットを最大限に生かすためには、65万円の特別控除を受けられるようにする必要があります。
まず、55万円の特別控除を受けるための要件は次の通りです。
(1)事業所得または事業的規模の不動産所得があること
(2)複式簿記でかつ発生主義で記帳していること
(3)申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること
(4)確定申告の法定期限を守ること
上記の「55万円の特別控除」の要件を満たしたうえで、電子帳簿保存か、e-Taxでの確定申告を行うと、65万円の特別控除が受けられます。また、55万円の要件を満たさない青色申告事業者は、10万円の特別控除しか受けられなくなります。
4. 申告書を作成
確定申告書は、国税庁のサイトや税務署で入手できます。
(1)使用する申告書
確定申告書B様式:個人事業主が使う一般的な様式です。
青色申告決算書または収支内訳書:青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書です。
(2)記入項目
収入金額:年間の売上合計を記入します。
必要経費:項目ごとに分類(例:家賃、交通費、仕入れ費)します。
控除額:各種控除額を記入します。
5. 申告書を提出
提出方法は3通りあり、税務署窓口へ直接提出する方法、控えの返送用封筒を同封して郵送する方法、「e-Tax(電子申告)」という国税庁のシステムを使ってオンラインで提出する方法があります。e-Taxを利用すると、還付が早くなることが多いです。
なお、提出期限を過ぎると延滞税や加算税が発生することに注意しましょう。提出後の訂正には、「修正申告」または「更正の請求」が必要です。
6. 納税
(1)納付期限
確定申告の提出期限と同じ日(通常、3月15日)です。納付が遅れると延滞税が発生します。
(2)納付方法
銀行窓口やATMでの支払いや、クレジットカード納付、QRコード納付やインターネットバンキングによる納付があります。還付額がある場合は、自分の銀行口座を記入して税務署からの請求を待ちましょう。通常、4~5月に送金があります。
まとめ
本記事では、個人事業主が確定申告を行う際の手続きの流れについて、順を追って説明しました。確定申告は複雑に思われるかもしれませんが、事前に準備をしっかり行えばスムーズに進められます。不明点がある場合は、税務署や専門家に相談するのも一つの方法です。適切に手続きを行い、安心して事業を続けていきましょう。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
