「3000万円」のローン残高がまだあるのに、3年間の期限付き「異動」が決定…“固定資産”や“住宅ローン控除”はどうなるの?
配信日: 2025.02.17

少しでも税額負担を軽くしたいなら、住宅ローン控除が転勤時に適用される条件を知っておくことが大切です。今回は、転勤時の固定資産税や住宅ローン控除の扱いについてご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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転勤するときの固定資産税や住宅ローン控除の扱い
家を持っている時点で固定資産税は発生します。ただし、自身が転勤したあとも家族が住んでいるのか、誰も住んでいないのかで住宅ローン控除の適用が変わる可能性があるため、確認しておきましょう。
単身赴任の場合
まず、単身赴任の形で転勤し、家族が住んでいる場合は固定資産税の支払いが必要ですが、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の利用も可能です。
通常、住宅ローン控除は条件に「住宅ローン等を利用して居住用家屋の新築などをした日から6ヶ月以内に住んでいる」「住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで住み続けている」ことが含まれています。
しかし、国税庁によると、転勤をはじめとするやむを得ない理由により控除を受ける本人が、控除が適用される住宅に居住できない場合は、一定条件を満たしていれば住宅ローン控除の適用対象です。そのため、家族が住んでいれば住宅ローン控除を受けられるでしょう。
家族で引っ越して持ち家を空き家にする場合
一方で、もし家族全員で転勤先へ一時的に引っ越すと、条件を満たさなくなるため住宅ローン控除は利用できません。
また、固定資産税は土地や家屋を所有していると発生する税金なので、居住の有無は関係なく課税されます。そのため、転勤後の税金負担が単身赴任の場合よりも増える可能性があるでしょう。
ただし、家族で引っ越しても、戻ってきたときに控除の残存期間があれば、住宅ローン控除の再適用を受けられます。国税庁によると、再適用のための条件は以下の通りです。
・本人の勤務先から転任命令を受けるといったやむを得ない理由がある
・引っ越す日までに一定の手続きを行っている
手続きは引っ越す前と戻ってきたときに所定の書類を所轄税務署長に提出すれば問題ありません。また、持ち家を購入した年の12月31日までの転勤は引っ越し時の手続きはいらないものの、戻ってきたときに書類の提出が必要です。申請を忘れると適用されないため、注意しましょう。
住宅ローン控除の金額はどうなる?
今回は、以下の条件で住宅ローン控除が適用された場合に、単身赴任をした場合と家族で3年間引っ越してから戻ってきたときの住宅ローン控除額の違いを比較しましょう。
・認定住宅を3000万円のローンで購入
・金利は全期間固定で1.370%の元利均等返済型
・ボーナス払いは利用しない
・ローンの支払い開始は令和7年1月から
・居住地は東京都で、扶養人数は2人
・年収500万円
・支払い開始からちょうど3年経過した直後の1月に転勤をする
・住宅ローン控除額の計算式は令和6年1月1日~令和7年12月31日のものを使用
国税庁によれば、認定住宅の住宅ローン控除額は「年末残高など(上限4500万円)×0.7%」の100円未満を切り捨てて求められ、13年間控除が適用されます。転勤をした4~6年目の年末残高および住宅ローン控除額は表1の通りです。
表1
住宅ローン年末残高 | 住宅ローン控除額 | |
---|---|---|
4年目 | 2725万3081円 | 19万700円 |
5年目 | 2654万2519円 | 18万5700円 |
6年目 | 2582万2161円 | 18万700円 |
※筆者作成
もし単身赴任の場合は4~6年目の控除もすべて適用されます。しかし、家族で引っ越した場合は4~6年目の控除が適用されないため、控除総額は55万7100円少なくなる計算です。
なお、今回の試算はあくまでも仮のものです。変動金利を利用していたり控除の条件が変わったりすると結果は変わることに留意しておきましょう。
固定資産税は発生するが住宅ローン控除は状況により異なる
固定資産税は住宅を持っている時点で発生するため、居住の有無は関係ありません。単身赴任でも家族全員での引っ越しでも、基本的に同額が課されます。しかし、住宅ローン控除は本人が住んでいないとき、単身赴任なのか家族全員で引っ越したのかで扱いが変わります。
住宅ローン控除をなるべく多く受けたい場合は、単身赴任を選ぶとよいでしょう。しかし、家族の都合などにより全員で引っ越したとしても、引っ越すときと戻ってきたときに手続きをし、控除の残存期間があれば再び住宅ローン控除を受けられます。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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