パートで働くなら知っておきたい「103万円・106万円・130万円の壁」ってそもそも何?

配信日: 2025.02.20

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パートで働くなら知っておきたい「103万円・106万円・130万円の壁」ってそもそも何?
2024年の総選挙以来、「103万円の壁」を中心とするパートタイマーの収入について、与野党・政府間で協議が進められています。
 
パートタイムで働いている場合、一定の収入額に応じて、所得税や社会保険の適用を受けるため、「103万円の壁」を始めとしたいくつかの「壁」を意識しながら働いている人も多いと思われます。
 
今回は、このパートタイム就業者の年収の「壁」について学んでみましょう。
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

3つの壁(103万円、106万円、130万円の壁)とは

パートタイム労働者(就業者)の人数は、厚生労働省データ(※1)によると2022年で約1414万人になっています。この人数は、総労働者の26.6%、女性労働者の43.0%にのぼります。
 
そして、多くのパートタイムで働く人が気になるのが「年収の壁」だと思われます。「壁」はいくつかありますが、103万円、106万円、130万円の3つが主なものです。最初に、この3つの壁の内容を見てみましょう。
 
図表1

図表1

筆者作成
 

103万円の壁

103万円の壁は、所得税の課税・非課税の分岐点(壁)です。所得税では、給与所得控除55万円と基礎控除48万円が認められており、年収がこの合計である103万円以下であれば所得税が非課税になります。
 
また、配偶者がいる場合、パート就業者が非課税の場合は、配偶者の扶養家族になるので、控除により配偶者の課税所得が少なくなり、その結果、所得税と住民税額も少なくなります。
 
仮に、配偶者が10%の所得税率が適用されている場合は、配偶者控除38万円の10%の3万8000円、20%の所得税率適用の場合は7万6000円、配偶者の所得税が少なくなります。したがって、パート就業で収入が103万円を超えると、所得税と住民税が増えることになります。
 

106万円の壁

106万円の壁は、パート就業者本人が社会保険を適用される分岐点(壁)です。従業員が51人以上の規模の会社等で、週20時間以上就業している場合は、社会保険に加入する義務が発生します。
 
したがって、106万円以上の収入があり、会社等の規模と週の就業時間の基準を超えると、社会保険料(厚生年金・健康保険・雇用保険料)を負担する必要があります。この場合でも、学生のアルバイト収入の場合は、社会保険の適用が除外されています。
 

130万円の壁

130万円の壁は、従業員50人以下の会社等に就業している場合でも、週20時間以上就業している場合は社会保険への加入が必要になります。また、パート就業者の収入が130万円を超えると、厚生年金の第3号被保険者であることと、配偶者の健康保険の扶養家族であることが認められなくなります。
 
このケースで、社会保険の加入条件を満たす場合(週20時間以上就業)は、自身の働く会社で社会保険(厚生年金や健康保険)に加入できますが、小規模の会社で会社の保険がない場合などは、個人で国民年金や国民健康保険に加入する必要があります。
 
したがって、収入130万円以上のパート就業者は、ほとんどの場合、税金・社会保険の負担が発生することになるといえるでしょう。
 

103万円・106万円・130万円の壁を超えた場合の負担額

次に、実際に103万円・106万円・130万円の壁を越えて収入があった場合の、税や社会保険料の負担額を具体的に見てみましょう。図表2では、それぞれの壁(分岐点収入)を超えた年収105万円・107万円・135万円の場合を想定し、シミュレーションしました(※2)。
 
なお、所得控除は、給与所得控除と基礎控除のみとしています。実際には保険料控除や医療費控除などの所得控除があると思われますが、今回は省略しています。
 
図表2

図表2

税金・社会保障教育「税金・保険料シミュレーション」に基づき筆者作成
 
結果は、税金の負担も発生しますが、社会保険料が特に大きいことが分かります。また、住民税は自治体によって、社会保険料は健保組合や協会健保など保険者によって保険料率が違ってきますので、図表2の数値はあくまでも目安として考えるとよいでしょう。
 
このほかに、保険料額は厚生年金や健康保険と比べて少額ですが、雇用保険もあります。雇用保険は、


・31日以上雇用する見込みがあること
・1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること
・昼間の学生ではないこと

が加入条件となっており、収入の壁とは違った形ですが、パート従業員の場合でも支払う可能性があるものです。
 

今後の見通し

昨年来の与野党の協議で、103万円の壁を123万円に見直すことは確定していますが、具体的な処理法は未定です。また、106万円や130万円の壁の問題は、現在協議中であり、今後見直される可能性も考えられます。
 
103万円の壁は、所得税の課税についての分岐点ですが、むしろパート就業者にとって影響が大きいのは106万円や130万円の社会保険に関しての壁であり、税と社会保険の一体改革が求められるところです。
 

出典

(※1)厚生労働省 パートタイム労働法・指針に規定された 事業主の講ずべき措置とその実施状況 1 パートタイム労働者数
(※2)税金・社会保障教育 税金・保険料シミュレーション
厚生労働省「年収の壁について知ろう」 あなたにベストな働き方とは?
厚生労働省 雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ~
 
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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