子どもが医師に「歯並びが悪く、他の歯にも影響がある」と言われ歯科矯正をしています。クレジット分割払いにしているのですが医療費控除できますか?
配信日: 2025.03.06


執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
歯科矯正は医療費控除の対象になる?
今回のご質問内容を2つに分けて考えていきたいと思います。
まず1つ目は、「歯科矯正は医療費控除の対象になるか」です。
歯の治療は高額になる場合があります。治療内容が保険のきかない自由診療であることや、高価な材料が使われていることに起因することが多いです。
事前受付で治療費用について説明があるので、意向を伝えておくことも必要です。国税庁のホームページでは「一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なものは医療費控除の対象にはならない」としています。
歯科矯正は、容貌を美化するための歯科矯正は医療費控除の対象になりません。ですがAさんの子どもの場合は、“発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正”に該当します。歯列矯正をする方の年齢・矯正の目的などから、歯列矯正をする必要があると認められたケースは医療費控除の対象です。
クレジット分割払いにしている場合の控除額はどうなる?
2つ目の内容は「クレジットカードで分割払いにした時の控除額はどうなるか」です。医療費の支払いが高額になった時、一括で支払えない場合は分割払いを利用することがあります。歯科ローンやクレジット払いは、利用者に代わって信販会社が医療機関に立替払いをしている状態です。
例えば10月15日に歯科医院でクレジット決済した場合を考えます。請求金額は10万円で、支払方法は10回の分割払いとします。利用者は1回当たり1万円+α(金利や手数料分)を支払い、これが10回続きます。
この分割払いの契約は、信販会社との間で交わされています。医療費控除はあくまでも医療機関(今回は歯科医院)の領収書に基づいた金額・日付で受けます。実際の支払いは年をまたぐことになりますが、医療費控除の明細書に記載する「支払った医療費の額」は10万円です。
国税庁ホームページには「歯科ローンを利用した場合には、患者の手もとに歯科医の領収書がない場合があると考えられますが、この場合には、医療費控除を受けるときの支出を証明する書類として、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書を保存してください」とあります。高額な治療費です。
領収書が見つからない場合は、契約書などで代用できることも知っておくと安心です。ただし、金利や手数料相当分は医療費控除の対象になりませんので、注意してください。
1月1日から12月31日で集計する時の注意点
このように、医療機関に支払った日付・金額がポイントになります。治療が長期間に及ぶ場合は年をまたぐことも考えられますが、確定申告は〇年分というくくりです。その年の1月1日から12月31日に支払った金額を合算します。
合算する中で、注意点があります。子どもの歯の治療10万円以外に、Aさん自身が病気になり入院したとします。入院に掛かった病院での支払いは12万円でしたが、加入している医療保険から15万円の給付を受けられました。給付金で入院費用を賄っても、3万円が余る計算です。この場合Aさんの入院費用12万円は、医療費控除の対象になりません。
計算上残る3万円をどうするのか? 歯の治療費10万円を含む他の医療費の集計から3万円を差し引いて申告すると勘違いすることがあるようですが、その必要はありません。Aさんの入院により支給された給付金は、入院に掛かった費用から差し引くことで完結します。
最後に追加情報です。子どもの歯科矯正の通院にかかる費用も医療費控除の対象です。付き添いが必要な場合は、付添人の交通費も算入できます。通院日と費用を記録しておく必要があります。ただし、ガソリン代や駐車料金は算入できませんので注意ください。
出典
国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士