昨年の医療費が合計「100万円」に…“高額療養費制度”と“医療費控除”はどちらを使えばお得でしょうか?

配信日: 2025.03.07

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昨年の医療費が合計「100万円」に…“高額療養費制度”と“医療費控除”はどちらを使えばお得でしょうか?
多額の医療費を支払ったときに利用できる制度が、「高額療養費制度」「医療費控除」です。どちらも実際に支出した医療費に応じて経済的負担を軽くできる制度ですが、条件や適用される期間などが異なります。
 
今回は、高額療養費制度と医療費控除を併用できるのか、またそれぞれの違いなどについてご紹介します。制度を利用するか悩んでいる方は、参考にしてください。
FINANCIAL FIELD編集部

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高額療養費制度と医療費控除は併用できる

高額療養費制度と医療費控除は、それぞれの条件を満たしていれば併用できます。ただし、医療費控除に合算できるのは高額療養費制度で還付された金額を除いた医療費です。
 
まずは、それぞれの制度の違いを解説します。
 

高額療養費制度の内容

高額療養費制度は、病院や薬局などで負担した医療費が1ヶ月(その月の1日から月末まで)で上限額を超えていると、超えた金額分を払い戻してもらえる制度です。上限額は年齢や所得に応じて変動します。
 
厚生労働省によると、例えば、年収が約370万~770万円で69歳以下の方だと、上限額は「8万100円+(医療費-26万7000円)×1%」で求められます。
 
ただし、入院中の食事代や差額ベッド代などは計算に含みません。
 
なお、1ヶ月で複数回受診した場合の医療費も合計できます。申請するときは、自身が加入している健康保険組合や全国健康保険協会を始めとする公的医療保険に支給申請書を提出しましょう。
 

医療費控除の内容

医療費控除は、1年の医療費が一定金額を超えていれば、最大200万円まで所得控除を受けられるものです。国税庁によれば、以下の条件に該当していると控除が適用されます。
 

・納税する本人が、本人や生計を一にする配偶者、その他の親族のために支出した医療費
・その年の1月1日~12月31日までの間に実際に支払った医療費

 
例えば、令和6年12月に治療を受け、実際に治療費を支払ったのは令和7年1月だとすると、その治療費は令和6年分の医療費には含まれません。令和7年分に持ち越して計算することになります。
 
また、医療費控除の金額は「実際に負担した医療費の合計額-保険金や高額療養費などの金額-10万円」です。もしその年の総所得金額等が200万円以上で1年の医療費負担が10万円以下なら、医療費控除は適用されません。
 
ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の方は負担基準が「総所得金額等×5%」になるため、10万円未満の医療費でも控除を受けられる可能性があります。
 
適用されるタイミングは、確定申告を行うときです。確定申告書に控除を記載する欄があるため、医療費控除の部分に該当する金額を書いて、医療費控除の明細書を添付して提出しましょう。
 

高額療養費制度と医療費控除を併用したときの税額

今回は、以下の条件で高額療養費制度で受け取れる金額と、制度の併用により税額がどれくらい変わるかを求めます。
 

・年収400万円
・東京都新宿区在住40代
・賞与は受け取っていない
・月収は年収を12で割ったものとする
・控除は医療費控除、社会保険料控除、給与所得控除、基礎控除のみ
・給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除は令和6年度のものを使用
・全国健康保険協会に加入
・事故や病気で2月に60万円、7月に40万円の計100万円を医療費として支払った

 
まず、今回のケースだと高額療養費制度の上限額は2月が8万3430円、上限を超えた51万6570円を受け取れます。また、7月の上限額が8万1430円、受け取れるのは31万8570円です。合計すると、83万5140円を受け取れます。
 
次に、高額療養費制度の有無により税額がどれくらい変わるかを計算しましょう。まず、条件を基にすると、各控除や税額は表1のようになります。
 
表1

高額療養費制度を利用 高額療養費制度の利用なし
医療費控除 6万4860円 90万円
社会保険料控除 63万3552円
給与所得控除 124万円
所得税基礎控除 48万円
所得税課税所得
(1000円未満切り捨て)
158万1000円 74万6000円
所得税率 5%
所得税額 7万9050円 3万7300円
住民税基礎控除 43万円
住民税課税所得 163万1588円 79万6448円
住民税率+均等割額 10%+5000円
住民税額 約16万8159円 約8万4645円

※筆者作成
 
高額療養費制度を利用しなかった場合、所得税額は4万1750円、住民税額は約8万3514円安くなります。しかし、高額療養費制度により受け取れる金額は83万5140円なので、医療費控除額が少なくなったとしても、制度を利用した方が経済的負担は軽くなるでしょう。
 

高額療養費制度と併用した方が金銭的負担は軽くなる

高額療養費制度は、1ヶ月の医療費が上限額を超えていたら超えた分が支給されます。一方、医療費控除は1年間の医療費が一定金額以上だと所得控除が受けられる制度です。
 
医療費控除は、支払った医療費から10万円と高額療養費制度の金額を引いて求めるため、税額は併用しなかったときの方が安くなります。しかし今回の試算において、高額療養費制度では安くなった税額よりも多くの金額を受け取れるため、上限を超えているなら両制度を併用した方がよいでしょう。
 

出典

厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ (平成30年8月診療分から)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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