78歳の父が、実家を「3000万円」で売って賃貸に住み替えました。「確定申告しないと」と心配していましたが、税金はどれくらいかかりますか?
配信日: 2025.03.07

ただ、不動産の売却は大きな金額の取引となるため、税金がどうなるのか、親だけでなく将来相続を受ける子どもも気になるところです。
本記事では、親が実家を3000万円で売却した場合、税金がどれくらいかかるのか解説します。売却した翌年の確定申告の必要性なども解説しますので参考にしてください。

執筆者:松尾知真(まつお かずま)
FP2級
不動産を売却すると税金はどれくらいかかるのか
不動産を売却すると、売却した翌年に所得税と住民税がかかります。所有期間5年を境に税率が変わりますが、実家のように長年所有している不動産であれば、所得税が復興特別所得税まで含めて15.315%、住民税が5%で合計20.315%です。
ただし、売却した価格そのものが、課税対象になるわけではありません。課税されるのは「譲渡所得」と呼ばれる、不動産を売却して得られた利益部分です。
譲渡所得は、売却した不動産を当初購入したときの費用である「取得費」や、今回の売却に伴い、不動産会社に支払った仲介手数料などの「譲渡費用」を差し引いて計算します。
さらに、譲渡所得には数多くの「特別控除」があり、一定の要件を満たせば、特別控除ごとに定められた額を控除できます。そのため、課税対象額は「売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」となり、これに税率を掛け合わせて税額を計算します。
親が3000万円で実家を売却した場合の税金は?
それでは、今回のように、親が実家を3000万円で売却した場合の税金はどうなるでしょう。結論から言えば、今回の売却では所得税も住民税も課税されません。
自分が住んでいた家の売却には、「マイホームを売ったときの特例」による特別控除があり、その控除額の上限は3000万円です。親にしてみれば、実家は居住用のマイホームにほかなりませんので、夫婦や親子への売却でない限り、譲渡所得があったとしても、3000万円までは差し引けることになります。
つまり、売却代金が3000万円であれば、取得費や譲渡費用がいくらかにかかわらず、課税される譲渡所得はなくなるため、今回の売却に所得税や住民税はかかりません。
売却した際、確定申告は必要なのか
不動産を売却して、譲渡所得が発生した場合は、その翌年に確定申告が必要です。特に「マイホームを売ったときの特例」などの特別控除の適用を受ける場合は、確定申告と同時に適用を申請することになります。
令和6年中の不動産売却で得た譲渡所得を確定申告するのであれば、令和7年2月17日から3月17日までが受付期間です。マイナンバーカードを用いてe‐Taxを利用すれば、スマホやPCなどから申告できます。
まず、利用登録を済ませ、売却した価格や取得費、譲渡所得などを入力します。さらに譲渡所得の特例の適用を受ける場合、特例の選択が必要です。今回の場合は「居住用財産を譲渡(売却)した場合の3000万円の特別控除の特例(措法35条第1項)」を選択して申請します。
なお、売却価格が取得費と譲渡費用の合計を下回るなどして、売却が赤字となり「譲渡損失」が発生している場合は、確定申告は原則不要です。
ただし、売却した実家の住宅ローンが残っているなど一定の要件があれば、その「譲渡損失」をほかの所得と相殺する「損益通算」などが可能かもしれません。そのため、まずは確定申告するつもりで、取得費や譲渡費用を確かめてみましょう。
まとめ
親が実家を3000万円で売却した場合、確定申告により「マイホームを売ったときの特例」の適用を受ければ、所得税や住民税を心配する必要はないでしょう。ただ、e-Taxなどで簡素化されているとはいえ、取得費などを調べ直す必要もあり、高齢の親に確定申告の作業は面倒という場合もあるかもしれません。
また、一人暮らしで高齢の親には生活のサポートも必要でしょう。そのため、子どもの立場で確定申告の作業を手伝ったり、これを機に相続についても話し合ったりできれば、いい機会になるのではないでしょうか。
出典
国税庁 土地や建物を売ったとき
国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
執筆者:松尾知真
FP2級