昨年、定年して退職金「1000万円」もらいました。年金を毎月「15万円」もらっていますが、確定申告しないといけませんか?

配信日: 2025.03.07 更新日: 2025.07.02
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昨年、定年して退職金「1000万円」もらいました。年金を毎月「15万円」もらっていますが、確定申告しないといけませんか?
年金受給者でも一定の要件を満たす場合には、確定申告をする必要があります。どのような人が該当するのか、退職金1000万円と年金を毎月15万円受け取っているというAさんの質問から、要件を確認してみましょう。
植田周司

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
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退職金に関する確定申告の要件

退職金は、一般的に「退職所得」として扱われ、源泉分離課税の対象となります。源泉分離課税とは、支払い時点で税金が天引きされ、その時点で納税が完了する制度です。
 
そのため、通常は確定申告の必要はありません。ただし、以下の場合には確定申告をすることで、払い過ぎた税金を返してもらう(還付を受ける)ことができます(※1)。
 
<退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合>
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合、確定申告が必要です。この申告書は、退職金に対する税額計算に必要な書類で、勤続年数などを記入します。
 
この申告書を提出していない場合、その退職手当等の金額に対して20.42%の税率で源泉徴収が行われます。この場合は確定申告をすることで還付を受けられます。
 

年金収入と確定申告

公的年金等の収入は、以下の条件で確定申告の要否が決まります。
 
・公的年金等の収入金額が400万円以下で、その他の所得金額が20万円以下の場合(退職金等の源泉分離課税分の所得は除く)
 
この2つの条件を満たす場合は、確定申告は不要です(※2)。仮にAさんは昨年6月末に退職し、それまでの半年で給与が300万円支払われたとします。また7月以降年金の受給を開始したとすると、


・年金収入:15万円×6ヶ月=90万円
・給与所得:300万円(6月までの収入)-給与所得控除65万円= 235万円
・退職金:1000万円(源泉分離課税)

Aさんの例では、年金収入は400万円以下ですが、給与所得が235万円ですので、他の所得が20万円以上となるため、確定申告が必要です。
 
確定申告をしない場合、法律に基づく義務違反となり、罰則が科される可能性があります。また、納税額の過不足に関する調整がなされないため、本来受けられるはずの還付金を受け取れない可能性もあります。
 

年の途中で退職した場合の所得税

Aさんは、退職の昨年6月まで給与から源泉徴収された所得税を払い過ぎている可能性があります。
 
会社員として12月末まで働いた場合には、年末調整(注1)によって所得税の精算が行われますが、年の途中で退職し再就職しない場合は年末調整が受けられないため、確定申告が必要になるケースがあります。
 

(注1)

年末調整とは、1年間の給与所得に対する所得税の過不足を精算する手続きです。例えば、Aさんが6月に退職し、その後再就職せずに年金生活に入ったとします。この場合、6月までの収入に対しては年末調整が行われません。
 
賞与や毎月の給与から源泉徴収される所得税は、前年の年収を基準に計算されています。Aさんが6月で退職し場合、昨年の給与収入は単純に半分程度になります。
 
そのため源泉徴収された所得税は本来払うべき税率より高くなっていると考えられます。もし払い過ぎていた場合は、確定申告をすることで還付金を受けられます。
 

別の理由で確定申告が必要な場合

確定申告が不要な場合でも、以下のようなメリットがある場合は、確定申告を行うことをお勧めします(※3)。


・医療費控除を受ける場合
・生命保険料控除や地震保険料控除を受ける場合
・住宅ローン控除を受ける場合
・確定拠出年金の掛金控除を受ける場合
・赤十字等の寄付金控除を受ける場合
・ふるさと納税を行い、ワンストップ納税制度(注2)を利用していない場合

(注2)

ふるさと納税のワンストップ納税制度とは、寄付先の自治体に寄付金を送る際に、確定申告をせずに寄付金控除が受けられる仕組みのことです。この制度を利用すると、寄付した人がわざわざ確定申告をする手間が省け、手続きが非常に簡単になります。
 
ただし、他の理由で確定申告を行う場合は、その申請内容で所得税・住民税が計算されワンストップ納税制度が無効となります。ふるさと納税についても入力を忘れないようにしましょう。
 

まとめ

Aさんの場合は、退職金は源泉分離課税済みで確定申告不要、年金収入も確定申告基準額以下で原則不要のように見えますが、年の途中で退職するまでの給与所得が20万円を越えていますので、確定申告が必要です。
 
確定申告の要否は、個人の状況によって異なります。不安な場合は、税務署に相談するか、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。また、確定申告が不要な場合でも、還付を受けられる可能性がある場合は、確定申告を検討することをお勧めします。
 

出典

(※1)国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
(※2)国税庁 公的年金等を受給されている方へ
(※3)国税庁 No.1100 所得控除のあらまし
 
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

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