昨年離婚しました。確定申告で家族の通院費を「医療費控除」したいのですが、離婚しても確定申告は今までどおり行っていいのでしょうか?
離婚によって家族構成や扶養関係が変わると、控除の対象がガラリと変わることがあります。たとえば、「自分が医療費を負担したのに、控除できることを知らなかったので確定申告をしていなかった」といったケースも。知らずに確定申告すると、本来受けられるはずの控除を逃してしまう場合もあります。
本記事では、離婚後の医療費控除のルールや注意点をわかりやすく解説します。「知らなかった! 」と後悔しないために、ぜひ最後までチェックしてください。
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
新卒で警察官としてキャリアをスタート。その後、都内税理士法人で勤務し、多くの企業の経理業務を手がけた経験を活かして独立しました。現在は、「会社のお金」と「家庭のお金」をワンストップで相談できるパートナーとして活動しています。
小学生の子どもを育てるママでもあり、ライフプラン作成やキャッシュフロー分析など、個人やご家庭向けの具体的で実用的なアドバイスを提供しています。
企業経理相談や経営分析にも精通しており、これまでの経験を基に、経営者が抱えるお金の悩みに幅広く対応。さらに、執筆やセミナー活動も行い、「知って得するお金の知識」を届けています。お金の管理や経営に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
医療費控除の基本ルールをおさらい
医療費控除とはどんなものかというと、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が、一定額を超えた場合に所得から控除できる制度です。
控除対象となる医療費は以下のとおりです。
・自分の医療費
・生計を一にする親族(配偶者・子ども・両親など)の医療費
控除するための条件は、以下のとおりとなっています。
・支払った人が控除を受けること
・生計を一にする親族の医療費であること
この「生計を一にする」とは、同じ家計で生活しているか、経済的に支援している関係を指します。
・同居している家族 → 生計を一にしている
・別居しているが、仕送りしている → 生計を一にしている
・離婚後、経済的なつながりがない → 生計を一にしていない
つまり、離婚後に支払った元配偶者の医療費は控除できないのです。
【ケース別】離婚後の医療費控除、あなたはどれ?
もし昨年離婚したという場合、どの医療費が控除できるのか、具体的に解説します。
ケース(1) 離婚前に支払った医療費 → 控除OK
離婚前に支払った医療費であれば、従来どおり控除対象になります。ただし、自分が支払ったものであることが前提です。
ケース(2) 離婚後に元配偶者の医療費を払った → 控除NG
離婚後、元配偶者の医療費を支払った場合は控除できません。元配偶者は、もう「生計を一にする親族」ではないからです。
ケース(3) 離婚後、子どもの医療費を払った → 条件付きで控除OK
子どもの医療費を支払った場合、控除できるかどうかは扶養の状況によります。
* 子どもが扶養親族 → 医療費控除として申告できる
* 子どもが扶養親族でない(元配偶者が扶養者) → 医療費控除できない
ここでのポイントは、 「親権がある=扶養している」ではないということです。税務上の扶養に子どもが入っているかが重要ですから注意してください。
医療費控除を受けるための3つのチェックポイント
(1) 扶養関係の確認(子どもの場合は要注意! )
離婚後、子どもの扶養をどちらが持っているか確認しましょう。扶養を外れると、医療費控除の対象外になってしまいます。
(2) 支払者を明確にする
支払った人しか医療費控除できません。例えば、「離婚後に元妻が払った医療費を控除したい」というのはNGです。
(3) 領収書&支払い記録は必須!
確定申告では「医療費控除の明細書」が必要です。領収書の宛名が自分の名前になっているか確認しましょう。
まとめ
離婚後の医療費控除は、誰が支払い、誰のための医療費かによって適用できるかどうかが変わります。離婚前に支払った家族の医療費は基本的に控除の対象ですが、離婚後に元配偶者の医療費を負担した場合は控除できません。
子どもの医療費は、扶養者が支払った場合に限り控除対象となるため、「親権がある=控除できる」ではなく、税務上の扶養関係を確認することが重要です。
また、医療費控除を受けるには領収書の保管と医療費控除の明細書の提出が必要です。確定申告の際には漏れがないよう、扶養状況や支払い記録を整理しておきましょう。
子どもの医療費は助成金を受けられる自治体が多いですが、歯の治療などでは高額な費用がかかる場合もあります。離婚後の確定申告は、状況に応じて適用される控除が変わるため、しっかり精査して申告しましょう。
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
執筆者:富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者
