退職金800万円をもらった父が「あとは会社が申告してくれる」と余裕そうな発言。さすがに確定申告が必要かと思いますが、不要なケースもあるのでしょうか?
配信日: 2025.03.08


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
退職金の確定申告は多くの場合で不要
退職金は、税法上「退職所得」として扱われます。退職所得には、退職所得控除という税制上の優遇措置が設けられています。これは、長年の勤務に対する功労に報いるためのものです。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて計算されます。20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。1年未満の端数は切り上げて計算します。
ほとんどの場合は退職時、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、この申告書に基づいて会社は退職所得控除を適用して所得税と住民税を源泉徴収します。源泉徴収とは、所得を受け取る際に支払者が税金を天引きする仕組みです。退職金は、会社が税務署に代わって所得税などを納付します。
この場合はすでに税金が天引きされているため、自分で確定申告をする必要はありません。
退職金の確定申告が必要となるケース
退職金を受け取った際に確定申告が必要か否かは、主に源泉徴収で対応できるかどうかによって異なります。多くのケースでは、会社が退職所得控除を適用して所得税と住民税を源泉徴収するため、確定申告は不要です。
しかし、いくつかの例外があります。例えば退職後にアルバイトなどで年間20万円以上の所得がある場合、他の所得と合わせて確定申告をしなくてはなりません。また、生命保険料控除や地震保険料控除など他の控除を受けており、年末調整を受けていない場合は、確定申告が必要です。
さらに、源泉徴収された税金が多過ぎた場合は、確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。
また、同一年度に複数の会社から退職金を受け取ると、退職所得控除の計算が複雑になることから、確定申告が必要になります。退職金を受け取る人が障害者の場合で年末調整を受けていない場合は、障害者控除を受けるために確定申告をしてください。
そして「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合は、退職金に対して一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。正しい税額を計算して適切な控除を受けるために、確定申告で精算しましょう。
このように、源泉徴収で済みそうに思える場合でも、さまざまな要因で確定申告が必要となるケースがあります。税務署に相談するなどして、自身の状況に応じて適切に対応してください。
退職金800万円の具体的な税金計算例
ここでは、退職金が800万円となる場合の具体的な税金計算例を解説します。
勤続年数が20年であれば、退職所得控除額も800万円となるため課税対象金額は0円で、所得税は発生しません。確定申告も不要です。
勤続年数が10年だと退職所得控除額は400万円で、800万円から控除額を差し引いた400万円の半分の200万円が課税対象となります。所得税はこの200万円に対して計算しますが、通常は源泉徴収されているため、確定申告は不要となるケースが多いでしょう。ただし、前述のように他の所得があるなど確定申告が必要なケースもあります。
勤続年数が5年以下の場合や役員は、退職所得控除の計算方法が異なるため注意してください。
退職金の確定申告は自分で確認が必要
退職金を受け取った後に多くの人は「会社がやってくれるから大丈夫」と考えがちです。
確かにほとんどの場合、会社が源泉徴収を行うため確定申告は不要です。しかし「申告しなくても大丈夫」と思い込んでいると、思わぬ追徴課税を受けたり、損失を被ったりする可能性もあるため、自分で確認することをおすすめします。
不明な点があれば、税務署や税理士に相談しましょう。
出典
国税庁 【確定申告書等作成コーナー】-退職金の収入がある場合
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー