あなたの副業、税務署に「雑所得」扱いされるかも?「雑所得」と「事業所得」の違いと判断基準とは?
配信日: 2025.03.09

会社員は給与所得として税金が源泉徴収され、年末調整で調整されるのが一般的ですが、個人事業主は自分で所得を計算し、確定申告を行わなければなりません。
本記事では、会社員と個人事業主の所得や確定申告の違いを解説し、それぞれの特徴についても紹介します。

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
所得の種類
1. 会社員(給与所得者)
「給与所得」とは、会社や組織に雇用され、労働の対価として受け取る給与・賞与などの収入のことを指します。給与からは、毎月の源泉徴収(所得税や社会保険料などの天引き)が行われるため、本人が行う手続きは比較的少なくて済みます。
2. 個人事業主
「事業所得」とは、営利性・継続性・独立性を持つ事業活動から得る所得です。自ら商品やサービスを提供し、その対価として得られる利益がこれに該当します。個人事業主の場合、自分で売り上げや経費を管理し、毎年の確定申告で納税額を計算して納税する必要があります。
確定申告の必要の有無
1. 会社員(給与所得者)
(1)年末調整
多くの会社員の場合、会社が「年末調整」という仕組みを通じて1年間の所得税額を精算します。基本的に、会社に提出する書類(扶養控除等申告書、保険料控除証明書など)を準備すれば、勤務先が所得税や住民税を調整してくれます。
そのため、医療費控除や住宅ローン控除など特別な控除を受けないかぎり、自分で確定申告をする必要はありません。
(2)自分で確定申告が必要なケース
次の場合は、会社員でも確定申告をする必要があります。
・医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除(初年度)を受ける場合
・副業収入などの雑所得・事業所得が20万円超ある場合
・2ヶ所以上から給与を受けている場合で、一定の条件を満たす場合
・収入が2000万円を超える場合
2. 個人事業主
(1)原則として、毎年確定申告が必要
個人事業主は会社員と異なり、源泉徴収や年末調整がなされません。
1月1日から12月31日までの売り上げや経費を自分で集計し、所得税額を計算して、翌年2月16日から3月15日(令和6年度分は令和7年2月17日~3月17日)までに確定申告を行う必要があります。
(2)青色申告と白色申告
個人事業主が選べる申告方法には、帳簿の付け方や控除額の違いによって「青色申告」と「白色申告」があります。
青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除や赤字繰越など、税務上の優遇措置が受けられます。ただし、複式簿記による帳簿付けや事前の申請が必要です。白色申告は帳簿が簡易ですが、青色申告に比べて控除額が少なく、赤字繰越などの特典もありません。
税務上の特徴・メリット・デメリット
1. 会社員(給与所得者)
(1)メリット
会社が源泉徴収や年末調整を行うため、自分で納税手続きをする負担が少なくて済みます。また「安定した給与収入があれば、金融機関からのローンが比較的組みやすい」というメリットがあります。
(2)デメリット
収入や雇用形態によっては、副業の自由度が低い場合があります。給与所得控除という優遇措置はありますが、個人での節税策は事業所得よりも少ない傾向があります。
2. 個人事業主
(1)メリット
業務内容や営業形態を自分で自由に決めることができ、収入を増やせる可能性も高くなります。事業所得では必要経費を幅広く計上できるため、節税の余地が大きいです。
さらに青色申告を行えば、青色申告特別控除・赤字の繰越控除などのメリットを享受できます。
(2)デメリット
すべての売り上げや経費を自分で管理・計算しなければならず、会社員と比べ、帳簿付けや申告など事務作業の負担が大きくなります。加えて収入が安定しにくく、景気やビジネスの状況によって大きく変動するリスクがあります。
社会保険や年金に関しても、会社員ほどの保障がないため、国民健康保険・国民年金の負担が相対的に大きく感じられることがあります。
まとめ
会社員と個人事業主では、所得の種類から確定申告の手続き、税務上の優遇やリスクまで大きく異なります。会社員は会社に多くの手続きを代行してもらえる分、確定申告をする機会が少なくなります。一方、個人事業主は自由度が高い分、自ら税金や保険を管理し、確定申告も毎年行わなければなりません。
自分の働き方やライフスタイル、将来の展望に合わせて、どちらの形態が向いているかを見極めることが大切です。また、特に個人事業主として活動していく場合は、帳簿の管理や税法の知識が不可欠となりますので、早い段階で会計ソフトや税理士などの助言も活用し、正確な申告と節税対策を心掛ける必要があります。
出典
国税庁 令和6年分 確定申告特集
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー