昨年の医療費が「10万円」を超えたので医療費控除をしたいのですが、領収書の一部をなくしました…。もう申請はできないのでしょうか?
配信日: 2025.03.11


執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント
人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。
医療費控除とは
まずは、医療費控除について簡単に解説
1. 医療費控除
その年の1月1日から12月31日までの医療費が一定額を超えた場合に「所得控除」を受けられます。これを医療費控除といいます。医療費は本人だけでなく生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払ったものも含められます。
2.所得控除
所得税は1年間の所得に対して決められた税率をかけて算出しています。そのため、所得額から一定の金額を差し引くことで所得金額を少なくし、結果的に納税額を少なくできます。
所得税額 =(所得 − 所得控除)× 税率
3. 所得控除できる額
次の式で計算します。
医療費控除額(最高200万円) = (A)-(B)-(C)
(A)実際に支払った医療費の合計額
(B)保険金などで補てんされる金額
(例)
●生命保険契約などで支給される入院費給付金
●健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
なお、差し引く場合には、給付の目的となった医療費の金額が限度となります。保険金などで補てんされる金額のほうが多い場合でも、他の医療費からは差し引くことはありません。
(C)10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)
医療費控除を受けるための手続き
【確定申告】
医療費控除を受けるためには、「確定申告書」に「医療費控除の明細書」を添えて所轄の税務署に提出する必要があります。これらの書類は、パソコンやスマホを使って国税庁のホームページ(確定申告書等作成コーナー)から作成し、データで申告をすることも可能です。なお、費目によっては他にも添付資料が必要なものもあります(※1)。
【領収書の取り扱い】
確定申告書を提出する際、領収書の提出は不要ですが保管をしておく必要はあります。
後日税務署より「医療費控除の明細書」の記載内容を確認するために、医療費の領収書の提示または提出を求める場合がありますので、確定申告期限等から5年を経過する日までは保管をすることになっています。
例外として、「医療費通知」を添付した場合は、それに記載しているものは領収書の確認をする必要がないので保存しなくても大丈夫です。
領収書をなくしてしまった場合
では、領収書の一部をなくしてしまった場合はどうなるのでしょうか。
医療費の領収書は税務署に提出する必要ないのですが、領収書があるもので確定申告をします。
国税庁の「医療費控除に関する手続きについて(Q&A)」(※2)によると、『医療費の領収書に基づいて必要事項を記載した「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付して提出すること』『医療費の領収書を確定申告期限等から5年間ご自宅等で保存する必要があります』となっています。
ただし、健康保険組合などの医療保険者からもらった「医療費通知書」を添付する場合には、領収書をなくしてしまった分もカウントできる可能性があります。なぜなら、この場合には「医療費通知書」に記載されている医療費に基づいて「医療費控除の明細書」を記載でき、その分の領収書は保存の必要がないからです。
この方法で申告をすれば、領収書をなくしてしまった分を含めて申告は可能です。
まとめ
医療費控除を受けるためには領収書は大事です。大切に保管をしておきましょう。
出典
(※1)
国税庁 確定申告書等作成コーナー
国税庁 医療費控除明細書【内訳書】(見本)
国税庁 医療費控除に関する手続きについて(Q&A)(平成30年1月)
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 医療費控除を受けられる方へ
国税庁 医療費集計フォーム
国税庁 所得税のしくみ
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント