職場で「パートも確定申告したほうが得」という話を聞いたのですが、本当ですか? どのくらい得するのでしょうか?
配信日: 2025.03.15


執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
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確定申告で得をするためには条件がある
確定申告をすることでお得になるケースとしては、パートや会社員の方が年収103万円以上で、年末調整では適用できない所得控除を利用する場合、NISA口座以外で株式の配当金を得ていたり、株式投資による損失を翌期に繰り越したりする場合があります。
また、年度の途中で会社を変わった場合、前の会社の給与については年末調整の対象外となるため、確定申告をすると払いすぎた税金が戻ってきます。
年収103万円以上で医療費控除などが利用可能な場合
パートで働いている場合、給与が源泉徴収されていることがあります。源泉徴収は、翌年支払う予定の所得税分をあらかじめ給与から天引きする仕組みで、年末調整によって適正な金額に調整されて、多く支払っていた分は従業員に還付されます。
年末調整は従業員の税金関係の負担を小さくし、業務に集中することができる優れた制度ですが、医療費控除・雑損控除・寄付金控除(ワンストップ特例制度を利用しなかった場合のふるさと納税以外)は利用することができません。
年末調整で所得税を全額控除できておらず、これらの所得控除を利用できる場合は確定申告によってお得になる可能性があります。
NISA口座以外で上場株式の配当金を得ている場合
上場株式の配当金は、税率約20%の所得税等が源泉徴収されています。これは、申告分離課税のため他の所得とは関係なく課税されますが、確定申告により他の所得と合算できる総合課税に変えることができます。
所得税の税率は、課税所得の額に応じて税率が決まる累進課税制度なので、所得が少ない方は総合課税を選ぶことで、配当所得の税負担を小さくすることができます。
なお、NISA口座で取得した株式の配当金は源泉徴収されていないので、確定申告によるメリットを受けることはできません。
NISA口座以外で上場株式の譲渡損失を繰り越す場合
上場株式の売買による譲渡益には、他の所得とは関係のない申告分離課税で配当所得と同じく税率約20%の所得税等が課税されます。
損益通算は、上場株式の譲渡損益と配当所得で行うことができますので、年収103万円以上の方が株式の譲渡損失を抱えているのであれば、配当所得は申告分離課税を選ぶほうが税負担を小さくできる可能性があります。
NISA口座以外での上場株式の売買により損失を被った場合、確定申告をすることで譲渡損失を翌期以降の譲渡益から控除することができます。毎年確定申告が必要となりますが、最大3年間にわたり損失を繰り越すことが可能です。
確定申告を行う際の注意点
年収が103万円以上ある方で年末調整では利用できない医療費控除・雑損控除・寄付金控除がある場合、上場株式の配当所得や譲渡損失がある場合は確定申告によりお得になる可能性があります。
しかし、確定申告は自分自身で行うか税理士に依頼する必要があります。還付額が少額な場合、税理士に依頼すると手数料等でかえってマイナスになってしまうおそれがあります。
また、確定申告は年末調整で適用した所得控除を記載したうえで、新たに利用する所得控除を加えて納税額を再計算する必要があるので、確定申告に慣れていない方にはハードルが高いかもしれません。
もし間違えて申告してしまうと、修正申告の手間や延滞税などが発生する可能性もあります。確定申告相談会などを利用して、不備のない確定申告を行うようにしましょう。
出典
国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表