会社員なのに「確定申告が大変」と言う兄。少額ならしなくても「損」にならないと思うのですが、還付ってどれだけ受けられるのでしょうか?
配信日: 2025.03.17

しかし、「確定申告をすることで控除が受けられるから」と、あえて申告をする人もいます。その還付金が、手間に見合うものなのかは気になるところでしょう。
本記事では、ケースごとの還付金額を概算し、確定申告をすることで得をするケースと、しなくても大きな損にはならないケースについて考えていきます。

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
還付金額が大きく確定申告したほうがいい2つのケース
まずは、確定申告をしないことで大きな損となる2つのケースを見ていきましょう。
住宅ローンを組んだ場合
住宅ローンを利用して一定の条件を満たす住宅を購入すると、住宅ローン減税が適用されます。住宅ローン残高の0.7%が最大13年間還付される仕組みです。例えば、ローン残高が3000万円の場合の還付額は最大21万円で、これが13年間続きます。
住宅ローン減税適用の初年度は、確定申告が必要です(2年目以降は年末調整での適用が可能)。確定申告をしないことが大きな損につながるため、必ず手続きを行いましょう。
ふるさと納税で6自治体以上に寄附した場合
ふるさと納税は、納税先を5自治体以内に抑えればワンストップ特例制度を利用できるため確定申告は不要ですが、6自治体以上に寄附すると確定申告が必要になります。
例えば、5万円を寄附していた場合、所得税還付と住民税の控除(6月以降)であわせて4万8000円の減税となるわけですが、確定申告をしないと適用されません。6自治体以上に寄附した場合は、必ず確定申告を行いましょう。
還付金額が少ない場合があるもの
確定申告をしないと受けられない控除の代表として挙げられるのが、「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」です。これらは、適用しても還付金はわずかな場合があります。扶養する親族がいない年収500万円の人を例に考えてみましょう。
※給与収入500万円から給与所得控除144万円、社会保険料控除(報酬の15%)75万円、基礎控除48万円を差し引き、課税所得が233万円となるケースを想定
医療費が10万円を超えた場合─医療費控除
医療費控除は、年間の医療費のうち10万円を超えた分の所得控除が受けられる制度です。年間の医療費が12万円の場合は2万円の所得控除を、20万円の場合は10万円の所得控除を受けられます。
なお、所得控除とは「課税所得が減る」ことを意味するもので、全額が還付金として受け取れるわけではありません。
所得税の減税額は、「所得控除額×所得税率」で計算されます。年収500万円(課税所得233万円)の場合の所得税率は10%であるため、所得税の還付金額は以下の通りです。
●医療費が12万円(所得控除2万円):還付額は2000円
●医療費が20万円(所得控除10万円):還付額は1万円
さらに、住民税も「所得控除額×10%」の金額分だけ減税されますが、これは次の6月以降の住民税に反映される仕組みです。
医療費が10万円を少し超えた程度であれば、確定申告をしなくてもそれほど「損」と感じないかもしれません。
市販薬が1万2000円を超えた場合─セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、対象となる市販薬の購入額のうち1万2000円を超えた部分が所得控除となる制度です。なお、健康診断や予防接種など、「健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取り組み」を行っている必要があります。
還付金の考え方は医療費控除と同じです。例えば、3万円の対象薬を購入した場合、控除額は1万8000円となり、1800円分の所得税還付を受けられます(住民税が減税されるのも同様)。
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか適用できません。この場合も、購入した医薬品の金額が少額であれば、大きな損にはならないでしょう。
まとめ
確定申告が不要となる会社員であっても、住宅ローン控除の初年度やふるさと納税を6自治体以上に行った場合は、確定申告をしなければ大きな損になります。一方、医療費控除やセルフメディケーション税制は、還付金額が少ないこともあるため、手続きの手間を考えると申告しないことを選んでも良いかもしれません。
確定申告をするべきかどうかは、還付額と手間をてんびんにかけながら判断するとよいでしょう。
出典
国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
国土交通省 住宅ローン減税
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 セルフメディケーション税制とは
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士