1年間の支出は市販医薬品が「5万円」、通院費を含む医療費は「8万円」でした。”医療費控除”と”セルフメディケーション税制”のどちらを使えばより節税できるでしょうか?
配信日: 2025.03.19

今回は、医療費控除とセルフメディケーション税制の違いや、どちらが税金が安くなるかの例などについてご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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医療費控除とセルフメディケーション税制の違いとは
医療費控除・セルフメディケーション税制は、どちらも支払った医療費が一定金額を超えていれば差額分を所得から控除できる制度です。ただし、それぞれ適用される条件や上限額などが異なります。制度の併用はできないため、どちらの方がよりお得になるのか、計算方法や条件を知っておくことが大切です。
医療費控除
医療費控除は、納税者本人および生計を同じくする配偶者や親族の医療費を支払った金額が、1年で一定金額を超えていた場合に適用されます。ただし、保険金などから支払われた給付金は含みません。また、高額療養費制度により還付された金額も対象外です。
医療費控除で所得から引かれる金額は、「その年の実際に負担した医療費-民間や公的医療保険による補填金-10万円」で求められます。ただし、控除額の上限は200万円のため、200万円を超える分は控除されません。
なお、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円部分が所得の5%になるため、計算式は「総所得金額等×5%」です。
医療費控除の対象になるのは、以下に挙げられるような費用です。
・医師の診療
・治療や療養に必要な医薬品代
・介護施設の利用(看護、医学的管理の下における療養上の世話等に相当する部分の対価として入所者が負担する金額など)
・治療や診療などのために必要な通院費や道具代(入院時の洗面具など身の回りのものは除く)など
そのため、予防のためのビタミン剤などは医療費控除に含まれません。ただし、市販薬の風邪薬などは、治療や療養に必要で一般的な水準を大きく超えない金額であれば、医療費控除に合算できます。
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は、予防接種や定期健康診断を始めとする健康維持の促進や病気の予防のために一定の取り組みをしている方が、指定医薬品をドラッグストアなどで購入した場合に受けられる所得控除です。
1年間で指定医薬品に対して支払った金額が1万2000円を超えていれば、超えた金額が制度の対象になります。上限は8万8000円までです。上限額は医療費控除よりも低く設定されています。しかし、その分医療費控除に満たない医薬品の購入額であっても所得控除を受けられる点がメリットです。
どちらの方がより節税できる?
節税額を計算するにあたって、条件は以下の通りです。
・年収400万円
・東京都在住40代の会社員
・年収を12で割ったものを月収とする
・賞与は考慮しない
・適用する控除は医療費控除またはセルフメディケーション税制、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除
・給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除は令和6年度の金額
・全国健康保険協会に加入
・指定医薬品:5万円
・通院費など医療費控除の対象となる支出:8万円
・保険やほかの制度は利用していない
まず、条件を基にしたときの社会保険料額(年額)は合計で63万3552円になります。また、給与所得控除は124万円になります。費用を基にした医療費控除、セルフメディケーション税制を利用したときのそれぞれの金額は表1の通りです。
表1
医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
---|---|---|
医療費による控除額 | 3万円 | 3万8000円 |
所得税課税所得 | 161万6000円 | 160万8000円 |
所得税率 | 5% | |
所得税額 | 8万800円 | 8万400円 |
住民税課税所得 | 166万6448円 | 165万8448円 |
住民税率(所得割+均等割) | 10%+5000円 | |
住民税額 | 17万1645円 | 17万845円 |
※筆者作成
今回のケースだと、医療費控除を選んだ方が所得税は400円、住民税は800円高くなる計算です。ただし、ほかの控除や条件によっては金額差も変わる可能性があります。
セルフメディケーション税制の方が税額が安くなることもある
医療費控除は医薬品のほかに通院費や治療に必要な道具代なども加算できますが、セルフメディケーション税制は指定医薬品のみとなります。しかし、セルフメディケーション税制は医療費が1万2000円を超えていれば適用されるので、医療費控除を使えなかった方でも利用できる可能性がある点がメリットです。
今回のケースだと、セルフメディケーション税制の方が少し税額が安い結果でした。状況によってどれくらい安くなるかは変わるので、両制度ともに利用できる場合は、一度計算してみるといいでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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