高校生の娘が「バイトで103万円超えて稼ぎたい」とのこと。わが家は「年収800万円」ですが、親の税金はどれだけ増えますか? 勤労学生控除についても解説

配信日: 2025.03.31 更新日: 2025.04.01

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高校生の娘が「バイトで103万円超えて稼ぎたい」とのこと。わが家は「年収800万円」ですが、親の税金はどれだけ増えますか? 勤労学生控除についても解説
「子どものバイト代が103万円を超えると扶養から外れる」と聞いたことはあっても、実際に親側の税負担がどのくらい増えるのか、詳しく把握している人は少ないかもしれません。
 
高校生がアルバイトを増やしたい理由はさまざま考えられます。例えば、「将来のために貯金したい」「趣味の資金がほしい」といったケースなどです。また、好きなアーティストのライブに行くために、できるだけ多く稼ぎたいと考える高校生もいるでしょう。
 
本記事では、親の年収を800万円と想定し、103万円を超えた場合にどれくらい税負担が増えるのかを試算しました。
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親の年収が800万円の場合は約11万4000円の負担増

子どもの年収が103万円を超えると、親の扶養控除(38万円)が適用されなくなり、その分の所得税と住民税が発生します。
 
具体的には、所得税が約7万6000円、住民税は約3万8000円増え、合計で11万4000円の負担増です。それぞれの内訳を見ていきましょう。
 

所得税は約7万6000円増

所得税は年収によって税率が変わります。
 
図表1

図表1

国税庁 No.2260 所得税の税率
 
年収800万円で課税所得を442万円と仮定した場合、課税所得の税率は20%です。扶養控除(38万円)が適用されなくなると、その分に対して税金が発生します。
 
38万円×20%=約7万6000円

結果、所得税の負担が約7万6000円増加します。
 

住民税は約3万8000円増

住民税は所得割と均等割の2つで構成され、合算して納付する仕組みです。住民税の内訳と税率は以下のとおりです。

【住民税の内訳と税率】

●所得税の税率:10%(道府県民税・都民税4%+区市町村民税6%)
●均等割の負担額:4000円(2024年度より森林環境税1000円が徴収されるため合計5000円)

 
※住民税の税率は自治体によって異なるため、最新の情報は各自治体に確認してください。
 
扶養控除(38万円)が適用されなくなると、その分の住民税が発生します。
 
38万円×10%(所得割)=3万8000円
 
結果、住民税の負担が約3万8000円増加します。
 

高校生本人が負担する税金は?

高校生が年収103万円を超えてアルバイトをすると、自身にも税負担が発生します。例えば、年収120万円の場合の税負担は図表2の通りです。
 
図表2

図表2

国税庁 No.2260 所得税の税率、東京都主税局 個人住民税 より筆者作成
 
次に、それぞれの税金の計算方法を詳しく解説します。
 

所得税の計算方法

アルバイトやパートの給与収入が103万円を超えると、その超過分に対して所得税(5%)が課税されます。
 
なお、複数のバイトを掛け持ちしている場合は、全ての収入を合計した年収が対象となるため注意が必要です。

【アルバイト収入が年120万円の所得税の計算例】

課税対象額:120万円-103万円=17万円
所得税額:17万円×5%=8500円

※課税対象額が年195万円以下の税率は5%。
※令和19年12月31日まで復興特別所得税が追加で徴収されます。
 

住民税の計算方法

住民税は未成年(18歳未満)と成年(18歳以上)で課税基準が異なります。

●18歳未満 給与収入が204万4000円未満なら住民税は非課税
●18歳以上 給与収入が約100万円を超えると住民税が発生(自治体によって異なる)

高校3年生で18歳を迎えた場合、成年の非課税基準が適用されるため、住民税が発生する可能性があります。

【アルバイト収入が年120万円/18歳以上の計算例】

課税対象額:120万円-98万円(住民税基礎控除43万円+給与所得控除55万円)=22万円
所得割:22万円×10%=2万2000円
均等割:5000円
合計:2万7000円※

※調整控除により最終的な税額が減額される可能性があります。
 

103万円を超えてもOK? 勤労学生控除とは

勤労学生控除を活用すれば、一定の年収まで所得税や住民税がかからない仕組みになっています。

●所得税:年収130万円まで非課税
●住民税(所得割):年収124万円まで非課税(※均等割は課税対象)

ただし、この控除を受けても年収103万円を超えると親の扶養から外れ、親の税負担が増える点には注意が必要です。
 
また、控除を適用するには高校生本人が確定申告や年末調整を行う必要があるため、手続きの負担も考慮しなければなりません。
 

高校生のアルバイトは103万円以内が無難

高校生のアルバイトは、特別な事情がない限り103万円以内に抑えるのが無難です。なぜなら、世帯全体の負担は今回の計算額以上に大きくなる可能性があるからです。
 
例えば、課税対象額が増えた結果として、親の所得税率が1段階上がってしまう場合があります。さらに、勤務先の規定によっては、家族手当の支給がなくなり、手取り額が減るケースも考えられます。
 
一方、子どもがもっと稼ぎたいと考える理由も考慮する必要があります。103万円の壁を意識しつつ、無理のない範囲で親がサポートすることで、家計と子どもの希望の両方を満たせるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
国税庁 No.1175 勤労学生控除
人事院 民間給与の実態 (令和4年職種別民間給与実態調査の結果)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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