「退職金」の「納税額」はどのくらい? 簡単な税金の「計算方法」はある?
配信日: 2025.04.05


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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退職金にかかる税金
退職金は、長年の勤労に対する報酬として位置づけられており、税制上の優遇措置が設けられています。しかし、退職金も所得の一部とみなされるため、課税の対象となり、所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。
税額を計算する際の重要なポイントの一つが「退職所得控除」です。この制度を活用すると、退職金の総額から一定の控除額を差し引くことができ、税負担を軽減できるといわれています。
なお、支給される退職金が退職所得控除の範囲内であれば、課税は発生しません。
退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額は、勤続年数に応じて異なる計算式が適用されます。
国税庁によると、勤続年数20年以下の場合は「40万円✕勤続年数」、勤続年数20年以上の場合は「800万円+70万円✕(勤続年数-20年)」となります。勤続年数が長いほど、控除額が増加する仕組みです。
例えば、38年間勤務した場合、控除額は以下のように算出されます。
「800万円+70万円✕(38年-20年)=2060万円」
この場合、退職金が2060万円以下であれば、税金はかからない計算になります。
また、勤続年数が短く、計算による控除額が80万円未満になる場合は、最低控除額として80万円が適用されます。
退職金の税金計算手順
退職金の税金計算は、以下の手順で行います。
まず、前述の方法で退職所得控除額を計算します。次に、課税対象となる退職所得は「(退職金-退職所得控除額)✕1/2」で算出します。ただし、勤続5年以下の役員などの退職手当や勤続5年以下の役員以外で退職金額から退職控除額を引いた額のうち、300万円を超える部分には「1/2」の軽減措置が適用されないといわれています。
所得税額は、退職所得に所得税率を掛けた後、控除額を差し引いて計算します。式は「(退職所得✕所得税率-控除額)✕102.1%」です。
所得税率は、課税される所得金額によって異なり、2015年以降は表1の通りです。なお、所得税には2037年までの復興特別所得税が含まれます。
表1
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円~194万9000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
330万円~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
695万円899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
900万円~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
※国税庁「No.2260 所得税の税率」を基に筆者作成
最後に、住民税額を計算します。計算式は「退職所得×住民税率」となり、退職所得に住民税率(10%)を掛けて算出します。
勤続35年、退職金額が2500万円を例にして計算してみましょう。
まず、退職所得控除額は「800万円+70万円✕(35年-20年)=1850万円」です。
次に、退職所得は「(2500万円-1850万円)×1/2=325万円」となります。所得税額は「(325万円✕10%-9万7500円)✕102.1%=約23万2277円」となります。住民税は「325万円✕10%=32万5000円」です。
これにより、税引き後の退職金額は「2500万円-所得税(23万2277円)-住民税(32万5000円)=2444万2723円」となり、退職金の手取り額は約2444万円になると考えられます。
退職金の税金を一度試算してみよう
退職金にかかる税金は、退職所得控除などの税制上の優遇措置が設けられています。控除の仕組みを理解し、納税額を試算することで、手取り額を把握できる可能性があります。退職後のライフプランを立てる際にも必要になるため、ぜひ一度計算してみてください。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 退職金と税
公益社団法人生命保険文化センター 退職金にかかる税金はどのくらい?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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