現在夫の「扶養」に入りながらパートで働いています。年収の壁が「160万円」に引き上げられた場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
この改正は、私たちの働き方や家計にどんな影響を与えるのでしょうか? 知っておきたい「メリット」や「落とし穴」を丁寧に紹介します。
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目次
年収の壁「160万円」とは? 103万円からの大幅引き上げのメリット
2025年度の税制改正により、長年「働き控え」の要因とされてきた「年収103万円の壁」が、160万円に引き上げられることになりました。これは、所得税が発生し始める年収の基準が変わるという意味です。
これまでは、給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)を合計した103万円を超えると所得税の対象となっていました。今回の見直しにより、給与所得控除が65万円、年収200万円以下の方は基礎控除が95万円に引き上げられたことで、160万円まで非課税となる層が広がりました。
この改正により、これまで年収を抑えて働いていたパート従業員などが、労働時間を増やしやすくなると期待されています。特に人手不足に悩む企業側にとっても歓迎すべき動きで、ある企業の調査によれば、9割以上の企業がこの改正に賛成しているようです。
見落としがちな制度の落とし穴! 依然として残る社会保険の壁
年収の上限が引き上げられたことで「収入が増えて家計が楽になる」と思われています。しかし、所得税が非課税でも、別の「壁」である社会保険の加入基準が変わっていないため注意が必要です。
たとえば、年収が106万円を超えると、一定の条件を満たす場合には健康保険や厚生年金への加入が義務づけられます。年収130万円を超えると、ほとんどのケースで社会保険料の負担が生じ、結果的に手取りが大幅に減る可能性があります。
第一生命経済研究所の試算によると、年収129万円では手取りが約126万円あるのに対し、年収130万円になると手取りは110万円となるようです。その差は16万円となり、単純に「年収を増やせば得」とはいえず、社会保険料の影響も考慮する必要があるでしょう。
社会保険加入が手取りに与える影響は? 実際の手取り額はどうなる?
年収129万円までなら所得税・社会保険料の負担は少なく、手取り額は比較的高くなります。しかし、130万円を超えると扶養を外れてしまい、手取りが一気に減少する可能性があるため、どこまで働くかの判断が重要になります。
社会保険に加入した状態で、加入直前の手取り(年収129万円、手取り126万円)を超えるには、年収151万円まで働く必要があるため、労働時間を増やす場合はこのラインが一つの目安になるでしょう。
損をしない働き方とは? 制度の理解とライフプランに応じた選択を
今回の改正で、所得税の発生ラインが大きく引き上げられたことは、多くのパート・アルバイト勤務者にとって働き方を見直す好機となります。
ただし、所得税だけでなく、住民税や社会保険料といった他の負担についても十分な理解が欠かせません。
制度が複雑なため、「なんとなく働きすぎると損をする」というあいまいな不安が心理的な壁として残りやすいのも事実です。そのため、税や社会保険の仕組みをしっかりと把握し、自分のライフプランに合った働き方を選ぶことが大切です。
出典
第一生命経済研究所 経済調査部 配偶者控除見直し論議、始まる~さらに分厚い“130万円の壁”~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
