「新年度から2000円の昇給」と思いきや、手取りはまさかの「750円減」に!? いったいナゼ?「4月から給料が変わる人」に潜む“社保・税金増加の罠”とは
実は、昇給したのに手取りが増えない、もしくは減ってしまうことがあるのです。日本は累進課税を採用しており、所得が増えると税金も増えます。
そのため、昇給した分がそのまま手取りに反映しない場合もあるのです。本記事では、月収28万9000円のケースをシミュレーションし、なぜ手取りが思うように増えないのかについて解説します。
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シミュレーションの前提条件
今回のシミュレーションでは、月収28万9000円の給与を基に、昇給後の手取り額の変動を考えます。昇給前の月収は28万9000円で、この場合の社会保険等の内訳は以下の通りです。
・社会保険料:4万1720円(令和7年・東京都内の協会けんぽに基づく計算)
・所得税:5695円
・住民税:1万1808円
これらを差し引いた手取り額が、28万9000円-(4万1720円+5695円+1万1808円)=22万9777円となります。
昇給後のシミュレーションと比較
月収28万9000円の給与から2000円昇給した場合、特に影響を受けるのが社会保険料です。社会保険料は標準報酬月額に基づき等級が決まり、その等級に応じた保険料が課せられます。そのため、昇給幅が同じでも、等級が上がるかどうかで保険料が変わってくるのです。
今回のシミュレーションの月収28万9000円の場合、21等級に該当します。21等級は標準報酬月額が27万から29万の範囲のため、昇給後の29万1000円では、22等級に上がります。
これにより、22等級の保険料が適用されるためシミュレーションしてみましょう。昇給後の税金の試算は以下の通りです。
・社会保険料:4万4700円
・所得税:5616円
・住民税:1万1650円
これらを差し引いた手取り額は、29万1000円-(4万4700円+5616円+1万1650円)=22万9034円となります。昇給前の手取りが22万9777円だったため、2000円昇給しても手取りはなんと約750円減少してしまいました。
昇給したのになぜ手取りが減るの?
昇給したのに手取りが減る理由は、主に税金や社会保険料の負担が増えることにあります。
社会保険料は、標準報酬月額に基づいて1等級から50等級に分かれており、数字が大きいほうが保険料負担額も大きくなります。昇給して等級が上がると保険料も増えます。
所得税は、累進課税が採用されており、所得が増えると税率が5%から45%の間で段階的に上がります。そのため、昇給によって課税対象額が増えると、その分税額も増加します。
住民税は、一律負担の所得割と、自治体によって異なる均等割があります。つまり、昇給すると所得が増え、それに伴って税金や社会保険料が増えるため、手取りが減ることがあるのです。
特に、昇給によって社会保険料の等級や税率が変わる境目では、昇給分以上に負担が増え、手取りが逆に減ることがあります。これが、昇給しても思ったように手取りが増えない原因です。
まとめ
昇給額がそのまま手取りに反映されるわけではないと思っていても、マイナスになるのは衝撃的ではないでしょうか。
ただし、逆転現象が起きてしまうのは、等級が変わる境目のときであり、必ずしも全ての昇給においていえることではありません。
また、住民税は前年の所得に対して支払うもので、すぐに影響が出るわけではないことも注意してください。社会保険料や各種税金の仕組みを理解し、昇給後にどれほどの影響があるのか予測しておくと、思わぬ減額にがっかりすることなく、冷静に対応できるかもしれません。
出典
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
国税庁 No.2260 所得税の税率
東京都主税局 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
