住民税とあわせて徴収されている「森林環境税」とは? いったい何に使われているの?
配信日: 2025.05.20

年間1000円という金額とはいえ、全国規模で見れば莫大(ばくだい)な金額にのぼります。ところが、その一部は使われることなく積み立てられているケースもあるようです。
この記事では、森林環境税の背景や仕組みに加え、税金の使途をめぐる課題と今後の展望を掘り下げます。

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年間1000円「森林環境税」の背景と目的とは?
2024年度から、個人住民税均等割に1人年額1000円が上乗せされる形で「森林環境税」の課税が始まりました。
総務省によれば、この新税は、地球温暖化の防止や水源の維持、国土の保全といった森林の公益的機能を維持・強化するため、地方自治体が森林整備を行うための財源を安定的に確保することを目的としています。
徴収された税金は、全額が「森林環境譲与税」として国から全国の市町村や都道府県に配分され、間伐や林業の人材育成、木材利用の促進などに充てられます。
国産木材の活用で森林整備を支援する横浜市の取り組み
例えば横浜市では森林環境譲与税を活用し、公共施設の建て替えや改修、増築において国産木材の積極的な利用を推進しています。この取り組みは、都市部での木材需要を創出し、山間部の林業支援や森林整備の促進につなげることを目的としています。
具体的には、2025年度(令和7年度)に、学校建替事業や公園、中央図書館等の市民利用施設の木材利用工事等に約2億1000万円の森林環境譲与税を活用する予定です。過去には、汐見台小学校の図書室や新井中学校の武道場などの施設整備にも同税が活用されました。
このように、都道府県・市町村は、インターネットなどを利用して森林環境譲与税の使い道を公表し、住民の理解と協力を得ることにも努める必要があります。これにより税金の透明性が確保され、持続可能な森林管理への貢献が期待されます。
森林環境税が活用されず積み立てに!? なぜ使われないケースがあるのか?
森林環境税・森林環境譲与税は、森林整備や林業振興を目的として導入されましたが、その使途には課題が指摘されています。
総務省によれば、2019年度から2022年度の4年間で、全国の都道府県と市町村に譲与された森林環境譲与税は約1500億円にのぼりますが、そのうち約500億円が使われず、基金として積み立てられているケースもあるとの報道がありました。
特に、森林面積が少ない都市部では、森林整備の必要性が低いため、譲与税の活用が難しい状況です。その結果、使い道が見つからず、資金が滞留している自治体もあるようです。
また、自治体によっては、森林環境税とは別に独自の森林税を導入しており、住民にとっては二重負担となっているケースもあります。
まとめ
森林環境税は、私たち一人ひとりが年間1000円を負担することで、全国の森林整備や林業振興を支援する仕組みです。その効果を最大限に引き出すためには、自治体の透明性のある運用と住民の理解が不可欠です。
私たちも、税金の使途に関心を持ち、地域の取り組みに参加することで持続可能な森林管理に貢献していきましょう。
出典
総務省 やさしい地方税 森林環境税及び森林環境譲与税
総務省 地方税制度 森林環境税及び森林環境譲与税について
横浜市
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー