親の「介護費用」が増えてきたので、親を「扶養」に入れるべきか悩んでいます。扶養に入れるとどのくらいの負担軽減ができるのでしょうか?

配信日: 2025.05.26 更新日: 2025.07.02
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親の「介護費用」が増えてきたので、親を「扶養」に入れるべきか悩んでいます。扶養に入れるとどのくらいの負担軽減ができるのでしょうか?
親の介護費用が増加し、扶養に入れるべきか悩む方は多いでしょう。しかし、親を扶養に入れることは、一見すると経済的負担を軽減できるように思えても、実際には複雑な影響をもたらします。税金面でのメリットがある一方で、介護保険料の増加や介護サービス利用料の上昇など、意外なデメリットも存在します。
 
本記事では、親の扶養に関する税金と介護の関係を詳しく解説し、どのような人が得をし、どのような人が損をする可能性があるのかを明らかにします。年齢や状況に応じた扶養戦略や、長期的な視点での最適化方法まで、介護と税金の意外な関係を徹底的に探ります。
廣重啓二郎

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

親の扶養と税金の基本

1)扶養控除の仕組み
扶養控除は、収入の少ない親族を援助している人の所得金額から一定額を差し引く制度です。扶養親族の年齢や同居の有無により控除額が異なります。70歳未満の親を扶養親族にすると、所得税で38万円、住民税で33万円の控除が受けられます。70歳以上の親の場合、所得税の控除額は同居で58万円、別居で48万円に増加します。
 
2)介護保険料の所得控除
介護保険料は社会保険料控除の対象となり、1年間の全額を控除できます。公的年金から特別徴収される場合は、確定申告時に控除申請が必要です。
 
3)医療費控除の活用法
多くの介護サービスが、医療費控除の対象となります。訪問看護、訪問リハビリテーション、介護老人保健施設でのサービスなどが含まれます。医療費控除を効果的に活用するには、家族全員の医療費を合算し、介護サービス以外の医療費も含めて計算することが重要です。
 

扶養のメリット:得をする人の特徴

1)所得税・住民税の軽減効果
扶養控除により、扶養する人の所得税や住民税が軽減されます。特に収入が高い人ほど節税効果が大きくなります。例えば、70歳以上の親を同居で扶養すると、所得税で58万円、住民税で45万円の控除が受けられます。
 
2)健康保険料負担の削減
75歳未満の親を健康保険の扶養に入れることで、親の国民健康保険料負担がなくなります。ただし、75歳以上の場合は後期高齢者医療制度に移行するため、この恩恵は受けられません。
 
3)高額療養費制度の利用
親を扶養に入れることで、高額療養費制度の利用が容易になり、多くの医療費負担を軽減できるメリットがあります。例えば、扶養家族として加入することで、1世帯としての自己負担限度額が適用され、個々の医療費を合算して計算することができます。このため、結果的に自己負担金が大幅に減少する可能性があります。
 

扶養のデメリット:意外な落とし穴

1)介護保険料の増加リスク
親が65歳以上の場合、扶養に入ることで、親の介護保険料が増加する可能性があります。
 
2)介護サービス利用料の上昇
介護サービスの利用料は扶養者の所得に応じて決まるため、負担が増える可能性があります。
 
3)医療費負担の増加可能性
高額療養費の自己負担限度額は扶養者の所得で決まるため、医療費の負担が増加する可能性があります。特に、持病がある場合や頻繁な入院が予想される場合は注意が必要です
 

年齢別・状況別の扶養戦略

1)75歳以上の親を扶養に入れる際の注意点
75歳以上の親は後期高齢者医療制度に加入するため、健康保険の扶養には入れません。ただし、税法上の扶養は可能で、所得税と住民税の控除を受けられます。扶養控除による節税効果と介護サービス費用の増加を比較検討する必要があります。
 
2)要介護状態の親の扶養における考慮事項
要介護状態の親を扶養に入れる場合、医療費控除や介護保険サービスの利用を考慮に入れる必要があります。扶養に入ることで高額療養費の自己負担限度額が上がる可能性があるため、総合的に判断することが重要です。
 
3)親の就労状況と扶養の関係
親の就労状況によっては扶養に入れない場合があります。例えば、親が青色申告者の専従者として給与を受けている場合や、白色申告者の事業専従者である場合は扶養控除の対象外となります。
 

介護と税金の最適化戦略

1)世帯分離のメリットとデメリット
世帯分離を行うことで、親の介護保険料や介護サービス利用料を抑えられる可能性があります。ただし、扶養控除が受けられなくなるデメリットもあるため、総合的に判断する必要があります。
 
2)介護保険サービスの利用と医療費控除の活用
介護保険サービスの利用料は医療費控除の対象となる場合があります。医療費控除を効果的に活用するために、介護サービスの利用状況と医療費を適切に記録し、確定申告時に漏れなく申告することが重要です。
 

まとめ

親の扶養を検討する際は、短期的な節税効果だけでなく、長期的な介護費用や医療費の見通しを立てることが重要です。また、一度扶養に入れると、金銭面の援助を止めることが難しくなる場合もあるため、生涯にわたって支援が可能かどうかも考慮に入れる必要があります。
 
扶養に関する判断は、家族の状況や収入、健康状態などさまざまな要因を考慮して行う必要があります。税理士や社会保険労務士などの専門家に相談し、最適な選択をすることをおすすめします。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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