4月に新卒入社したけど、初任給22万円から「雇用保険料・所得税」が引かれていた! 5月からは「社会保険料」も差し引かれるそうですが、手取り額はどのくらいになりますか?“給与から引かれるお金”を解説
本記事では、給与から控除される社会保険料や所得税について解説します。また、給与総支給額22万円の場合の手取り額も計算してみるので、参考にしてください。
特定社会保険労務士・FP1級技能士
給与から差し引かれるものは?
新卒の場合、給与から控除されるものは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税です。順に説明します。
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の金額
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、通常、当月分を翌月の給与から控除します。そのため4月に入社した人は、5月に支払われる給与から社会保険料の天引きが始まります。
なお社会保険料の計算には、給与額を段階的に区分した「標準報酬月額」が使われます。標準報酬月額が見直されるのは、原則として年に一度です。毎月変動するものではないため、残業手当が多く支払われた月でも、控除される健康保険料や厚生年金保険料は定額です。
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の保険料率
健康保険料率は、保険者(各健康保険組合と全国健康保険協会)によって異なります。また全国健康保険協会(協会けんぽ)は、都道府県ごとに保険料率を設定しています。
ちなみに2025年3月分からの健康保険料率は、東京都で9.91%(労使折半で4.955%)、大阪府で10.24%(労使折半で5.12%)です。なお厚生年金保険料率は、18.3%(労使折半で9.15%)で、全国一律です。
雇用保険料
雇用保険料は、健康保険料や厚生年金保険料と異なり、その月の給与総支給額に雇用保険料率を掛けて計算します。そのため、残業手当が多く支払われた月などは、連動して雇用保険料も高くなります。
所得税
所得税は、課税所得に税率を乗じて計算します。課税所得とは、課税収入から所得控除を差し引いた額です。社会保険料も所得控除の一つですから、給与が同額の場合、社会保険料が高いと所得税が低くなります。
月給22万円の手取り額はいくら?
給与総支給額が22万円(うち通勤手当5000円)の場合、手取り額はいくらになるでしょうか? 次の条件で計算していきます。
・東京都内の会社に勤務する22歳
・全国健康保険協会に加入
・標準報酬月額22万円
・時間外労働、休日労働等なし
・扶養家族・障害等なし、電車通勤
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)はいくら?
標準報酬月額22万円の場合、社会保険料は次のように計算します。
健康保険料=22万円×4.955%=1万901円
厚生年金保険料=22万円×9.15%=2万130円
雇用保険料はいくら?
残業などがなく給与総支給額も22万円だった場合、雇用保険料は次の通りです。
雇用保険料=22万円×0.55%=1210円
所得税はいくら?
所得税は、給与総支給額から非課税分の通勤費を差し引き、さらに社会保険料を控除した額によって算出します。
(22万円-非課税通勤費5000円)-社会保険料(雇用保険料を含む)合計3万2241円=18万2759円(課税される額)
給与所得の源泉徴収税額表にこの額を当てはめると、所得税は「4120円」になります。
結果、手取り額はいくらになる?
「総支給22万円-社会保険料・雇用保険料3万2241円-所得税4120円」により、この人の5月以降の手取り額は、18万3639円です。給与総支給額の22万円から、かなり減った印象ですね。
住民税の控除はいつから?
住民税は、前年(1月1日~12月31日)の所得に応じて課税されます。新卒の場合、通常は前年の所得がないため、入社初年度は住民税が控除されません。住民税の控除が始まるのは、入社2年目の6月に支払われる給与以降です。
まとめ
4月入社の人は、5月から社会保険料の控除が始まります。そのため4月の給与より5月の給与のほうが、手取り額は減少します。
また次年の6月からは住民税の控除も始まるため、特に昇給などがなければ、手取り額はさらに少なくなりそうです。
毎月の家賃などに加え、大きな買い物でローンを組むときやNISAを始めるときなども、あらかじめ手取り額がわかっていると安心です。給与や賞与の総支給額とともに、手取り額も把握しておくようにしましょう。
出典
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(大阪支部)
国税庁 給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
