今年定年を迎える父が「退職金で税金が増える」とふるさと納税を多く利用するそうです。節税になるのでしょうか?

配信日: 2025.05.30 更新日: 2025.07.02
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今年定年を迎える父が「退職金で税金が増える」とふるさと納税を多く利用するそうです。節税になるのでしょうか?
退職金を受け取る際、税金が増えるのではと心配する人もいるでしょう。中には「ふるさと納税」を活用して、少しでも税負担を軽くしたいと考える人もいるかもしれません。
 
しかし、退職金とふるさと納税の仕組みを正しく理解しないまま利用すると、期待したほどの節税効果が得られない可能性があります。本記事では、退職金とふるさと納税の関係、節税効果の有無、注意点についてまとめました。
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退職金の税金はどのように計算されるのか

退職金は通常の給与所得とは異なり「分離課税」として扱われ、退職金の税額がほかの所得と合算されず、独立して計算されます。また、退職所得控除枠により、税金の負担が軽くなるよう配慮されているのも特徴です。
 
退職金は「一時金として全額受け取る」「年金として分割して受け取る」「一時金+年金で受け取る」という3つの受け取り方があります。一時金での受け取りは、退職所得控除により、課税対象になる金額を小さくできるメリットがあるでしょう。
 
退職所得控除は、勤続年数が長いほど大きくなる傾向があります。今回は、勤続25年で退職金が2000万円の場合と、勤続18年で退職金が600万円のケースを比較してみました。
 

【退職所得控除額】
勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
勤続20年以下:40万円×勤続年数
 
【課税対象額】
(退職一時金-退職所得控除額)×1/2

 
・勤続25年、退職金2000万円の場合
800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円
課税対象額:(2000万円-1150万円)×1/2=425万円
 
・勤続18年、退職金600万円の場合
40万円×18年=720万円
課税対象額:(600万円-720万円)×1/2=0円

 
勤続年数が短いと、課税対象額が0円になるケースもあるでしょう。
 

ふるさと納税の仕組みと控除額

ふるさと納税は任意の自治体に寄付をすることで、所得税および住民税から控除を受けられる制度です。寄付額のうち2000円を超える部分が控除対象となり、実質的な自己負担は2000円で済みます(上限額を超えていない場合)。
 
ふるさと納税の控除上限額は、その年の総所得金額によって決まり、給与所得が減少する退職後は上限額も減少する可能性があります。
 

ふるさと納税は節税になる?

基本的に、住民税は前年の所得が課税の計算対象です。しかし、退職金における住民税は現年分離課税で、退職金から引かれています。控除を受ける前にすでに徴収されているため、ふるさと納税の控除対象外となっているのです。つまり、ふるさと納税による控除は所得税の一部に限られるといえます。
 
所得税についても、退職所得控除により控除される部分が大きく、課税対象となる金額も半分に圧縮されます。そのため、退職金が多額であっても、ふるさと納税の控除上限額が大幅に増えることはほとんどありません。
 
退職金を年金として受け取る場合、公的年金控除の対象となり、一定額までは課税対象外です。超過分が雑所得となり、その分だけふるさと納税の控除上限額が増える可能性があります。
 

ふるさと納税と確定申告

会社員は、通常11月~12月に行われる年末調整によって税額が決定されます。ふるさと納税の寄付金額は12月31日まで確定しないため、年末調整ではふるさと納税の控除を申告できません。そのため、控除を受けるためにはワンストップ特例制度を利用するか、確定申告をする必要があります。
 
ワンストップ特例制度は、ふるさと納税を利用した際、確定申告をせずに寄付金控除を受けられる制度です。利用するには、寄付先の自治体が5つ以内である必要があります。
 
退職後、再就職した場合など年末調整が受けられるのであれば、ワンストップ特例制度が利用可能です。しかし再就職しない場合は、寄付金受領証明書を保管したうえで確定申告が必要です。
 

退職金を一括で受け取る場合、ふるさと納税による節税効果は高いとはいえない

退職金を一時金で受け取る場合、ふるさと納税をたくさん利用しても、退職所得控除などにより、期待するほどの節税効果は得られないことが多いでしょう。
 
ふるさと納税を活用する際は、課税方法や控除上限額を正確に把握し、自己負担が増えないよう注意しましょう。退職金で税金が増えるのを理由に、ふるさと納税を過度に利用する必要はありません。所得状況や家族構成を基に、適切な寄付額を計算することが大切です。
 
仕組みを正しく理解しておけば、退職後も無理のない形でふるさと納税を取り入れることができるでしょう。
 

出典

国税庁 退職金と税
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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