「ふるさと納税」をしても「得しにくい人」がいるって本当? 「得する人」「損する人」の違いはなんなのでしょうか?
ふるさと納税では、手続きが正しくできていなかったり、控除限度額を超えた寄付をしていたりと、実質的に損をしている場合もあります。そこで今回は、ふるさと納税をこれから始める方や、すでに始めているけどなんとなく疑問を感じている方に向けて、「ふるさと納税で損をする人」と「得をする人」の特徴を解説します。
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ふるさと納税で損をする人の特徴とは?
ふるさと納税は、所得税や住民税を納めている人が、自治体に「寄付」をすることで、寄付額のうち2000円を超える部分が翌年の住民税と所得税から控除される仕組みです。
そのため、課税されていない人はふるさと納税をしても税金の控除を受けられず、ふるさと納税のメリットが受けられません。本章では、ふるさと納税で損をする人について、主な3つの特徴を紹介します。
年収が少ない人
年収が少ない場合は納税額自体が少ないため、ふるさと納税の控除上限額も小さくなります。例えば、年収300万円で共働き夫婦+子2人(大学生と高校生)の場合、控除上限額は7000円です。
この場合、返礼品の価値は法律により寄付額の最大30%と定められているため、返礼品の価値は最大でも2100円です。自己負担2000円を差し引いても、実質的な得は100円しかありません。このように年収が少ない場合、ふるさと納税をするメリットがなく、損であるといえます。
住民税や所得税を払っていない人
住民税や所得税を払っていない人の場合、ふるさと納税の減税効果が得られず損になります。そもそも住民税や所得税を支払っていない方(専業主婦・主夫や扶養内のアルバイトなど)の場合、ふるさと納税をしても控除される税金がありません。
そのため、寄付をして返礼品を受け取ることはできても、全額自己負担になり損をすることになります。
退職した人や退職予定の人
前年に退職した方や、これから退職する方は注意が必要です。なぜなら、退職金に適用される「退職所得」は、ふるさと納税の控除対象外だからです。
退職後は年収が変動しやすく、前年に退職して大きく年収が下がった場合、ふるさと納税の控除上限額も大幅に下がります。そのため、退職後に多額のふるさと納税をしても、損をする可能性があります。
ふるさと納税で得をする人の特徴は?
ふるさと納税は、住民税や所得税を多く納めている人ほどメリットを受けやすい制度です。指定都市市長会の「税制改正要望事項」では、ふるさと納税の所得水準別の利用状況について、ふるさと納税の納税額の約40%が課税所得1000万円以上の方により納められていると報告しています。
年収が高い人
ふるさと納税は、年収が高い人ほどメリットを受けやすい制度です。なぜなら、年収が高いほど控除上限額が大きくなる仕組みだからです。
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」より、年収300万円と年収1000万円以上での控除額の違いを図表1にまとめました。
図表1
| 年収 | 独身または共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 2万8000円 | 1万9000円 | 1万9000円 | 1万5000円 | 1万1000円 | 7000円 | - |
| 1000万円 | 18万円 | 17万1000円 | 16万6000円 | 16万3000円 | 15万7000円 | 15万3000円 | 14万4000円 |
出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ」より筆者作成
独身または共働き世帯との比較をしても、年収300万円と年収1000万円では控除額に15万円以上の差があります。このように、ふるさと納税は年収が高い人ほど恩恵を受けやすい制度であるといえるでしょう。
配偶者控除を受けていない独身者や共働き世帯
独身や配偶者控除を受けていない共働き世帯は、ふるさと納税のメリットを受けやすいといえます。その理由は、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されると、世帯全体の所得が下がり、控除上限額が低くなるからです。
例えば、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で掲載されている控除額の比較表によると、年収400万円の世帯の場合、単身または共働き世帯の場合の控除額は4万2000円なのに対し、配偶者に収入がない場合の控除額は3万3000円です(図表2)。
図表2
| 年収 | 独身または共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 4万2000円 | 3万3000円 | 3万3000円 | 2万9000円 | 2万5000円 | 2万1000円 | 1万2000円 |
出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ」より筆者作成
共働き世帯の場合、夫婦それぞれが上限まで自分の名義で寄付できるため、ふるさと納税のメリットを受けやすいといえるでしょう。
状況によっては「ふるさと納税をしない」選択も
ふるさと納税で損をする人と得をする人の大きく違う点は、納めている所得税や住民税が異なるということが分かりました。
しかし、年収が高くても控除や税金の種類の違いなどでふるさと納税のメリットを最大限生かせない場合もあります。ふるさと納税をする際は、自分が「損をする」か「得をする」かを考えましょう。場合によっては、「ふるさと納税をしない」といった判断も必要です。
出典
総務省 ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ
指定都市市長会 令和5年度 税制改正要望事項
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
