住民税が高いと母親に話したら「都会だからね」と言われました。住んでいる場所で「住民税」は変わるのでしょうか?
本記事では、住民税の税率や課税方式の違いをもとに、地域差の仕組みを分かりやすく解説します。
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住民税の基本【都道府県民税と市町村民税】
住民税とは、地域社会の運営費用を住民全体で分担するための税金です。
これは、都道府県が課税する「都道府県民税」と、市町村が課税する「市町村民税」の2つで構成されており、一般的にこの2つをまとめて「住民税」と呼びます。
住民税には、所得に応じて税額が変わる「所得割」と、所得に関係なく一律で課税される「均等割」の2種類があります。均等割は、都道府県民税が1000円、市町村民税が3000円の合計4000円が標準です。
なお、所得割は、所得に税率がかけられる仕組みで、所得が高いほど納税額も大きくなります。
住民税が高いと感じる理由
「都会だからね」という母親の言葉どおり、地域によって住民税の金額は違うのでしょうか。
まず、所得割の税率は、都道府県民税は4%、市町村民税は6%が標準税率で、原則として全国共通です。つまり、所得割の税率に関しては、住んでいる場所で大きな差はほとんどありません。
しかし、所得が高くなれば当然、所得割額も増えるため、平均収入が高い都市部では住民税が高いと感じやすくなる傾向があります。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、全国平均賃金33万400円を上回ったのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4都府県で、いずれも都市部です。
例えば、最も高い東京都の月収40万3700円と最も低い宮崎県の月収25万9800円から住民税所得割額を計算すると、東京都では約4万370円、宮崎県は約2万5980円となり、その差は約1万4390円になります。
住民税の地域差が生まれる理由
所得が同じであっても、住民税に地域差が生まれることがあります。
例えば、宮城県で独自に行われているのは1200円の「みやぎ環境税」で、県民税の均等割への上乗せです。脱炭素社会の推進や森林の保全および機能強化、気候変動の影響への適応など、独自の目的のために均等割に上乗せしている自治体もあります。
逆に、愛知県名古屋市では市民税が7.7%、県民税が2%で合計9.7%となるなど、市民税の所得割が合計10%の標準税率より低く設定されている自治体もあります。
このように、住民税の地域差は均等割の金額や、自治体独自の超過課税・軽減措置の有無が主な原因です。
また、均等割は自治体によって年間数百~1000円程度の差が生じることがあります。自分の住民税が高いと感じた場合は、毎年5月頃に送付される住民税の納税通知書を確認しましょう。
納税通知書には所得割額と均等割額、それぞれの内訳が記載されており、均等割に独自の加算がないかを確認できます。
2024年度から導入「森林環境税」
2024年度からは「森林環境税」が導入されました。これは森林整備などのための地方財源を安定的に確保する目的で、国税として個人1人あたり年額1000円が住民税の均等割と併せて徴収されています。
全国一律で課税されるため、特定の自治体によるものではありませんが、結果として住民税の見かけ上の金額を押し上げる要因の一つです。地域間の税負担の公平性は保たれますが、これまでこの税がなかった地域では住民税額が増加しています。
納得して支払うためにも住民税の仕組みを理解しよう
住民税の所得割の税率は、全国一律です。ただし、均等割の金額や自治体独自の超過課税の有無によって、地域差が生まれることがあります。
しかし、住民税は税率そのものよりも収入の違いが金額差につながっています。「都会だから住民税が高い」というイメージは、こうした背景を踏まえると、必ずしも税率が高いわけではないことが分かります。
もし、住民税が高いと感じた場合は、納税通知書や自治体のホームページで内容を確認し、不明点があれば自治体の窓口に相談してみましょう。
出典
総務省 個人住民税
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査
宮城県 みやぎ環境税(県民税均等割の超過課税)のお知らせ
名古屋市 所得割の税率
総務省 森林環境税及び森林環境譲与税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
