結婚してないだけで税金が高くなる…?「独身税」といわれる子ども・子育て支援金制度の概要とは
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
「子ども・子育て支援金制度」とは?
「子ども・子育て支援金制度」は、少子化対策の一環として、子育て世帯への支援を強化するための新たな施策です。令和8年度に創設され、令和10年度までに段階的に導入されていく予定です。
この制度では、医療保険に加入しているすべての人から、医療保険料に上乗せする形で「支援金」が徴収されます。
具体的な徴収額は、加入している医療保険制度や所得、世帯の状況などによって異なりますが、こども家庭庁の試算によれば、医療保険加入者1人あたり平均月額は、令和8年度見込み額が250円、令和9年度には350円、令和10年度には450円になると見込まれています。
同じくこども家庭庁によれば、徴収された支援金は、以下のような子育て支援策に充てられる予定であるとのことです。
●児童手当の拡充:所得制限の撤廃や支給対象の高校生年代までの延長、第3子以降の支給額増額など
●妊婦のための支援給付:妊娠・出産時に10万円の給付金を支給
●出生後休業支援給付:育児休業給付とあわせて手取り収入の10割相当を最大28日間支給
●育児時短就業給付:時短勤務中の賃金の10%を支給
●国民年金第1号被保険者の育児期間にかかる保険料免除措置 など
本制度はいわゆる「独身税」?
先の説明を見てこう考えた方もいるかもしれません。
「これ独身者にはメリットがないのでは? これがいわゆる独身税?」
実際、このような声はインターネット上やテレビの報道番組を含め、さまざまな場面で耳にします。この制度が「独身税」と呼ばれる理由は、独身者や子どもを持たない世帯も支援金の徴収対象となる一方で、直接的な恩恵を受けにくいと感じられるためだと考えられます。
例えば、独身で子どもがいない人は、児童手当や出生後休業支援給付などの給付を受けることがありません。それにもかかわらず、先のように支援金という形で医療保険料とともに負担を強いられることから、「独身税」と揶揄されることがあるのです。
しかし、支援金とあるように、政府はこの制度を「税金」とは異なるものとして位置づけています。つまり、将来的な社会保障制度の維持や経済の安定のために、全世代・全経済主体が協力する必要があるという考え方に基づいています。
社会保険料も実質的な税金と捉える人もいるかもしれませんが、健康保険料を健康であることの税として「健康税」という人は少ないように、考え方次第でこの支援金は独身の方にとっても前向きに捉えられるかもしれません。
独身者への影響と今後の展望
独身者や子どもを持たない世帯にとって、支援金の負担は家計に影響を与える可能性があります。特に、所得が低い世帯や生活費が高騰している世帯では、仮に月に数百円であっても負担が重く感じられることもあるでしょう。
一方で、少子化が進行する中で、社会全体で子育て世帯を支援することは、将来的な年金制度や医療保険制度の維持にもつながります。そのため、長い目で見れば、独身者や子どもを持たない世帯も間接的にでも恩恵を受ける可能性があると考えられます。
まとめ
「子ども・子育て支援金制度」は、少子化対策として導入される新たな仕組みであり、全世代・全経済主体が協力して子育て世帯を支援することを目的としています。
独身者や子どもを持たない世帯にとっては、直接的な恩恵が少ないと感じられるかもしれませんが、将来的な社会保障制度の維持や経済の安定に寄与する可能性があります。
支援金は平均で月々数百円程度と見込まれています。しかし、その小さな負担が未来を作ると考えたら、制度の意義は十分にあると思えるでしょう。
現在の社会的背景を考えると、直接的な恩恵が少ないといえる独身者や子どもを持たない世帯ほど、制度の趣旨や背景を理解し、今後の動向を注視することが重要ではないでしょうか。
出典
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度の創設 子ども・子育て支援金に関する試算(医療保険加入者一人当たり平均月額)(8ページ)
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度のQ&A
執筆者 : 柘植輝
行政書士
