実家に「月5万円」の仕送りをしています。これは扶養控除の対象になりますか?
本記事では、親を扶養に入れる条件などについて解説していきます。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
税法上の扶養に入るための条件
扶養に入るための条件は、税法上(所得税・住民税)と社会保険上(健康保険)とで異なります。まず、税法上の条件と優遇内容について解説します。
1. 税法上の条件
(1)生計を一にしていること
親が同じ屋根の下で暮らしていなくても、生活費を仕送りしている場合は「生計を一にしている」こととみなすことができます。したがって、今回のケースは扶養の条件の一つを満たすことになります。
(2)親の収入が一定額以下である
親の年間の合計所得金額が、48万円以下であることが求められます。ここでいう「所得」とは「収入(いわゆる額面)」ではなく、収入から必要経費などを差し引いた金額となります。給与のみの場合は年収103万円以下、年金収入のみの場合は、65歳未満なら年収108万円以下、65歳以上なら年収158万円以下が目安となります。
(3)親が個人事業主の事業専従者ではない
親が青色申告者の事業専従者として、その年に一度も給与を受け取っていないこと、あるいは、白色申告者の事業専従者ではないことが条件となります。
例えば、扶養する子が自営業を営んでいて、親を事業専従者としている場合は、親は子の扶養家族になることができません。
2. 扶養控除の金額について
扶養の条件に合致した場合には、扶養控除が受けられます。受けられる金額は、親の年齢や同居の有無によって異なります(図表1を参照)。
図表1
| 区分 | 控除額 | |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族(16歳以上) | 38万円 | |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 | |
| 老人扶養親族 (70歳以上) |
同居老親等以外の者 | 48万円 |
| 同居老親等 | 58万円 | |
(国税庁「専門用語集」より抜粋。一部、著者追記)
社会保険上(健康保険)の扶養に入るための条件
次に、社会保険上(健康保険)の扶養に入る条件について解説します。
1. 社会保険上(健康保険)の条件
(1)生計を一にしていること
(2)親の年齢が75歳未満であること
75歳以上は、後期高齢者医療制度に加入し、その制度の被保険者となるためです。
(3)親の収入が一定額以下であること
1)親と別居している場合
年間収入が130万円未満(親の年齢が60歳以上、または、障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)、かつ親の収入が仕送り額より少ない場合、扶養に入れることができます。
2) 親と同居している場合
年間収入が130万円未満(親の年齢が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合180万円未満)、かつ、親の年収が子の2分の1未満である場合
2. 親を社会保険上の扶養に入れることのメリット・デメリット
親が子の扶養家族になれば、子が加入する健康保険に加入することができるため、親の健康保険料の負担がなくなります。
一方、親が高齢になると、自身が支払う介護保険料や高額療養費の負担が増える可能性があります。これは、介護保険料や高額療養費の自己負担分が子の所得に応じて負担が大きくなるためですので、注意が必要です。
まとめ
実家に仕送りをしている場合は親と子が「生計を一にしている」とみなされ、親の収入が一定以下などの条件があれば、親を扶養に入れることができます。ただし、税法上と社会保険上の扶養条件が異なりますので、注意が必要です。
扶養に入ることができれば、税制面での優遇や親の保険料負担の軽減ができます。一方、親が負担する介護保険料や高額療養費の自己負担分が増える可能性があるので、注意が必要です。
なお、手続きは子の勤務先ですることができますので、詳しくは勤務先の担当窓口に相談するとよいでしょう。
出典
国税庁 NO.1180 扶養控除
国税庁 NO.1180 扶養控除 「生計を一にする」の意義
国税庁 専門用語集 控除対象扶養親族
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
