収入に応じて金額が変わる「税金」と「社会保険料」。年収400万円→500万円になっても手取りは100万円も増えない!?
給料から引かれる金額の決まり方を理解しておくと、給料が上がったときに手取り額の目安がどれくらい変わるのか比較できます。今回は、年収から引かれる金額や昇給による手取りの変化の例などについてご紹介します。
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
年収が上がると引かれる税金が多くなる理由
年収が上がると、収入から引かれる税金も増加する場合があります。まず、基本的に給料からは所得税、住民税、社会保険料が差し引かれます。
所得税は、累進課税制度を採用しており、所得が高くなるほど所得税率も高くなる点が特徴です。国税庁によると所得税率は表1のように変動します。
表1
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1000円~194万9000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円~329万9000円まで | 10% | 9万7500円 |
| 330万円~694万9000円まで | 20% | 42万7500円 |
| 695万円~899万9000円まで | 23% | 63万6000円 |
| 900万円~1799万9000円まで | 33% | 153万6000円 |
| 1800万円~3999万9000円まで | 40% | 279万6000円 |
| 4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率」を基に筆者作成
また、住民税は基準が「所得割10%+均等割5000円(道府県民税+市町村民税+森林環境税)」です。基準と同じ場合、5000円は給料が上がっても同じですが、所得割は給料が高くなると税額も高くなります。
ただし、住民税は都道府県や市町村の判断によって税率や金額が異なる場合がある点に注意が必要です。なお、所得税はその年の所得を基に税率や金額が決まりますが、住民税は前の年の所得を基に翌年の住民税が決定されます。
社会保険料額も引かれる金額が増える
社会保険料のうち、厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料は標準報酬月額を基に決められます。標準報酬月額は、手当も含めた税金が引かれる前の給料を、一定金額ごとに区分した報酬月額に当てはめて決定する金額です。
給料が上がると標準報酬月額も高くなるため、厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料も高くなります。また、雇用保険料も給料を保険料率にかけて求めるため、収入が上がるにつれ引かれる金額も多くなるでしょう。
なお、社会保険料の計算に使われる標準報酬月額は、「定時決定」と呼ばれる方法で決められます。これは、毎年4~6月の平均報酬額を基にその年の9月~翌年8月までの標準報酬月額を決める方法です。
そのため、実際には昇給してもすぐに社会保険料が上がるわけではなく、タイミングによっては社会保険料に反映されるまで少し時間が空くでしょう。
年収400万円と500万円で手取りはいくら変わる?
では、年収が100万円上がると手取りの差はいくら変わるのかを比較しましょう。条件はどちらの場合も同様とし、以下の通りです。
・東京都江東区在住独身40代
・年収を12ヶ月で割ったものを報酬月額とする
・全国健康保険協会に加入
・賞与は考慮しない
・給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除のみを適用
・社会保険料や各控除は令和6年度のもの
まず、年収400万円のときの報酬月額は約33万3333円、給与所得控除は124万円、社会保険料の年額合計は63万3552円です。
また、年収500万円だと報酬月額は約41万6667円、給与所得控除は144万円、社会保険料の合計額は年76万5048円になります。これらの条件を基にすると、年収が100万円上がったときの手取りの差は表2の通りです。
表2
| 年収400万円 | 年収500万円 | |
|---|---|---|
| 所得税課税所得 | 164万6000円 | 231万4000円 |
| 所得税率、控除額 | 5%、0円 | 10%、9万7500円 |
| 所得税額 | 8万2300円 | 13万3900円 |
| 住民税課税所得 | 169万6000円 | 236万4000円 |
| 住民税所得割+均等割 | 10%+5000円 | |
| 住民税額 | 17万4600円 | 24万1400円 |
| 手取り | 310万9548円 | 385万9652円 |
※筆者作成
年収400万円と年収500万円の手取りを比較すると、75万104円です。額面の昇給額と比べて、少なく感じる人もいるでしょう。ただし、今回は最低限の控除のみと考えて試算しているため、もし、ほかに控除が適用されると手取り額は増える可能性があります。
年収が100万円上がっても手取りが100万円上がるわけではない
給料からは所得税や住民税、社会保険料が差し引かれます。これらは同条件であれば給料が多くなるほど引かれる金額も増えるため、収入が思ったより上がらないと感じるケースもあるでしょう。
今回の比較では、年収400万円と年収500万円で手取りの差は75万104円でした。
しかし、もし控除がほかにもあると、所得が減ることで税額が安くなり、手取りが増える可能性もあります。手取りが少ないと感じるときは、利用できる控除がないか確認してみるとよいでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
