もし「ガソリン税」がなかったら…「170円/L」のガソリンはいくらになりますか?“月100L給油”のケースで影響額を試算

配信日: 2025.08.11
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もし「ガソリン税」がなかったら…「170円/L」のガソリンはいくらになりますか?“月100L給油”のケースで影響額を試算
「また値上がりした」「もう少し安くならないものか」車を運転する多くの人が、ガソリンスタンドに立ち寄るたび、そのような思いになっているのではないでしょうか。
 
特に地方部では、自動車は日々の通勤や買い物、レジャーなどに欠かせないため、ガソリン価格の高騰は家計に少なからず影響を与えています。
 
ガソリン価格には、いくつもの「税金」が含まれていると知られていますが、一体どのような内訳になっているのでしょうか。そして、「ガソリン税」がもしなかったとしたら、ガソリン1リットルあたりの価格はいくらになるのでしょうか。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

ガソリン小売価格に含まれる「税金」を確認してみる

ガソリンスタンドで支払う1リットルあたりのガソリン価格には各種の税金が含まれています。
 
この税金は非常に複雑な構造になっており、多くの人はよく分からないまま「ガソリン代」としてまとめて「納税」をしている状態ではないでしょうか。ガソリンにかかる税金の種類は、以下の通りです。
 
・揮発油税(国税)
国に納める税金で、ガソリン税の大部分を占めます。
 
・地方揮発油税(地方税)
地方自治体に納める税金です。
 
・石油石炭税・温暖化対策税(国税)
地球温暖化対策のための税金として、原油や石油製品の輸入・生産に対して課されます。
 
・消費税(国税・地方税)
ガソリン代には10%の税率が適用されています。
 
特に注目すべきは、「揮発油税」と「地方揮発油税」を合わせた、いわゆる「ガソリン税」です。これらの税金は、現在は「暫定税率」が適用されており、揮発油税は1リットルあたり48.6円、地方揮発油税は1リットルあたり5.2円が課されており、合計で53.8円がガソリン税として徴収されています。
 
そのほか、石油石炭税(1リットルあたり2.04円)と温暖化対策税(1リットルあたり0.76円)、消費税も加えていくと、ガソリン小売価格の4割近くを各種の「税金」が占めている計算です。
 
よく議論になるのが、「ガソリンは『二重課税』ではないのか?」という点です。ガソリン税という税金がかかった後の価格に上乗せする形で「消費税10%」が課されているため、消費税が「ガソリン税」分に対しても課税されている状態になっています。
 
これについて政府は「ガソリン税は石油メーカーなどが納税し、その負担が商品価格に上乗せされており、消費税の課税対象となる『課税資産の譲渡等の対価の額』に含まれるために、形式的には二重課税ではない」と説明していますが、非常に苦しい説明であるように筆者には聞こえます。
 
また、ガソリン税は「特定財源」として、主に道路の整備や維持管理にあてられており、高速道路や一般道の建設・補修、交通安全対策などがガソリン税によって支えられています。
 
ガソリン税の年間税収額は、令和7年度はおよそ2兆2000億円におよび、一気に廃止するとなると国の財政・経済に大きな影響が起きることも予想されます。
 

「ガソリン税」が無くなったとしたら、ガソリンの小売価格はどうなる?

2025年7月時点のレギュラーガソリン平均小売価格を見てみましょう。燃料油価格情報提供サイト「gogo.gs」によると、2025年8月3日時点での全国における平均レギュラーガソリン価格は1リットルあたり税込みで170.2円=約170円となっています。
 
この「税込み170円/リットル」という価格を基に、もし「ガソリン税」がなかったとしたら、ガソリン小売価格はいくらになるのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。
 
まず、170円から消費税10%を除き、「ガソリン税を含んだ本体価格」を計算します。
 
170円×100÷110≒154.55円
 
ここから、「揮発油税」と「地方揮発油税」を合わせた「ガソリン税」53.8円を差し引きます。
 
154.55-53.8=100.75円
 
この価格に、改めて消費税10%を加えます。
 
100.75×110÷100≒110.83円
 
よって、ガソリン税が無くなった場合のガソリン小売価格は1リットルあたり約110.83円となりました。現在の170円/リットルと比較すると、約59.3円/リットルの値下げ効果が生じます。
 
筆者は業務や子どもの送迎に車を使うことが多く、月におよそ100リットルのガソリンを給油しているのですが、これを例として家計に対する影響額を計算してみましょう。
 
この場合であれば、月に59.3円×100リットル=5930円の負担軽減になります。年間で考えると、約7万1200円(5930円×12ヶ月)もの家計改善効果が見込めるため、決して無視できない大きな金額だと言えます。特に地方在住者にとって、ガソリン税が軽減されれば朗報でしょう。
 
先の参院選で「ガソリン税廃止」に消極的だった与党が大敗したこともあり、にわかに「ガソリン減税」が現実味を帯びてきています。消費者としては政治の成り行きに引き続き注目していきたいところです。
 

まとめ

ガソリン小売価格には「揮発油税」と「地方揮発油税」を合わせた「ガソリン税」53.8円/リットルが含まれており、これらが廃止されると現在税込み170円/リットルのガソリン小売価格は110.83円/リットルまで低下する計算です。
 
今後の国会の議論において「ガソリン減税」が本格化していく可能性は高く、消費者としては要注目です。
 

出典

千葉県石油協同組合 千葉県石油商業組合 ガソリンと税金のおはなし
財務省 自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料
株式会社ゴーゴーラボ ガソリン価格比較サイト gogo.gs
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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