パート勤務で「国民健康保険料」を払ってるけど、引っ越し先で「国民健康保険税」を取られビックリ! これって“二重取り”にならないでしょうか?
特定社会保険労務士・FP1級技能士
国民健康保険税って?
会社員が加入する健康保険では健康「保険料」、年金は厚生年金「保険料」……ならば自営業者や勤務時間の短いパートなどが支払うのも国民健康「保険料」といきたいところですが、国民健康「保険税」を徴収する市町村もあります。なぜ「税」なのでしょうか?
名称がなぜ違う?
「国民健康保険料」にするか「国民健康保険税」にするかは、各市町村が決定できるとされています。
国民健康保険法第76条では「(国民健康保険の費用は)市町村が被保険者の属する世帯の世帯主から保険料を徴収しなければならない。ただし、地方税法の規定により国民健康保険税を徴収するときはこの限りでない」とされているからです。
国民健康保険料と国民健康保険税は何が違う?
とはいえ「国民健康保険法の定めによる国民健康保険料」と「地方税法の定めによる国民健康保険税」とでは異なる点があります。それはどのようなことでしょうか?
2つの違い
国民健康保険料と国民健康保険税では、賦課権の年数や徴収権の消滅時効などが違います。
「国民健康保険の手続きを忘れると、過去2年分の保険料を遡及(そきゅう)して取られることがあるよ」といった話を聞いたことはありませんか? このように、遡及して保険料(保険税)を決定し、請求できる権利を賦課権といいます。賦課権は、国民健康保険料では「2年まで」、国民健康保険税では「3年まで」とされています。
また、決定された保険料(保険税)が納付されないときに取り立てる権利を「徴収権」といいます。徴収権の消滅時効は、国民健康保険料は「2年」、国民健康保険税は「5年」です。
このように、国民健康保険税のほうが国民健康保険料よりも、徴収する側(市町村など)にとって有利になっています。
ただし、保険料(保険税)の徴収権限は違いますが、国民健康保険という制度自体に変わりはなく、保険給付の面で有利不利はありません。
保険料の市区町村・保険税の市区町村
最後に、東京都について、国民健康保険料の市区町村と国民健康保険税の市区町村を見ていきます。
国民健康保険料:東京23区、立川市、西東京市
国民健康保険税:武蔵野市、八王子市、町田市、三鷹市、国分寺市、青梅市など
このように、東京都内でも「保険料」と「保険税」が混在しています。なお、横浜市、仙台市、名古屋市、大阪市、札幌市、福岡市などは「保険料」です。一般的に、大都市圏では「保険料」としているところが多いといわれています。
まとめ
国民健康保険料と国民健康保険税、どちらの名称にするかは、市町村が決定します。しかし「保険料」と「税金」の性質の違いにより、保険料の遡及賦や消滅時効の期間などには差があります。給付面では同じで、二重取りされることもありません。引っ越し先でこれまでと異なり国民健康「保険税」を支払うことになっても、安心してください。
出典
e-Gov法令検索 国民健康保険法
e-Gov法令検索 地方税法
久留米市 国民健康保険料と国民健康保険税の違いについて
守谷市 国民健康保険税と国民健康保険料
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
