昨年より“税金がかかる収入”が100万円分増えた! 税金はどれくらい変わるの?
本記事では、仮に課税される所得金額が100万円増えた場合に税金がどれくらい変わるのか、また手取り金額を増やす節税対策などについても詳しく解説します。なお、本記事では復興特別所得税は考慮しないこととします。
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年収アップで増える税金の種類
年収がアップする際に増える税金は、所得税と住民税です。会社員の場合、基本的にこれらの税金は毎月の給与から天引きされています。一見すると、収入が大きく増えたように感じますが、連動して増えた税金も加味して手取り金額を計算する必要があります。
所得税
所得税とは、会社から支払われる給与など、所得に対してかかる税金です。所得税の計算方法は、まず1年間の収入から必要経費などにあたる金額を差し引いて「所得金額」を求めます。そこから各種控除を差し引いた「課税所得金額」に対して税率をかけて、税額控除がある場合は一定の金額を差し引いて算出します。
所得税は、課税所得金額に応じて段階的に上がる「超過累進税率」を採用しています。国税庁が公表している「所得税の速算表」によると、表1のとおり、7段階の税率に分けられています。
表1
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1000円から194万9000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円から329万9000円まで | 10% | 9万7500円 |
| 330万円から694万9000円まで | 20% | 42万7500円 |
| 695万円から899万9000円まで | 23% | 63万6000円 |
| 900万円から1799万9000円まで | 33% | 153万6000円 |
| 1800万円から3999万9000円まで | 40% | 279万6000円 |
| 4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率」を基に筆者作成
例えば、課税所得金額が300万円から400万円に増えた場合、適用される税率や所得税額は表2のように変わります。なお、税額控除は考慮しないこととします。
表2
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 | 所得税の計算式 | 所得税額 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 10% | 9万7500円 | 300万円×10%-9万7500円 | 20万2500円 |
| 400万円 | 20% | 42万7500円 | 400万円×20%-42万7500円 | 37万2500円 |
※筆者作成
このように、課税所得金額が100万円アップした場合、所得税は17万円増えることが分かります。
住民税
住民税とは、道府県民税と市町村民税を合わせた地方税のことを指します。主に住民税は、自分の住む地域における、教育・福祉・消防・救急・ゴミ処理といった行政サービスを賄うために使用されます。
また、住民税の構成内訳は、所得金額に関係なく一定の負担を求める「均等割」と、所得金額に応じて負担を求める「所得割」の2種類です。
総務省によれば、まず均等割の金額は、道府県民税1000円と市町村民税3000円を合わせた4000円です。一方、所得割は、所得金額に対して、道府県民税4%と市町村民税6%を合わせた10%をかけて算出します(政令指定都市は道府県民税2%、市民税8%)。
さらに、令和6年度から自然環境の整備を目的とした、森林環境税1000円が均等割と併せて徴収されています。これらの基準を踏まえて、都道府県や市町村ではそれぞれの判断で税率を定めて、納めるべき住民税額を決定しています。
例えば、上記基準を基にして、課税所得金額を300万円と400万円で比較した場合、住民税額は、表3のとおりです。なお、税額控除は考慮しないこととします。
表3
| 課税所得金額 | 所得割 (税率10%) |
均等割 (4000円+森林環境税1000円) |
住民税額 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 30万円 | 5000円 | 30万5000円 |
| 400万円 | 40万円 | 5000円 | 40万5000円 |
※筆者作成
このように、課税所得金額が300万円から400万円に増える場合、住民税も10万円増加します。
ただし、課税所得金額や税率区分などによって、増加する金額は異なる場合があるため、気になる方は実際に計算してみましょう。
手取りを増やすためにできる節税対策
収入がアップすると納める税金の額も増加する可能性があります。ただし、適切な節税対策を取れば、実質的な手取りを増やすことも可能です。ここからは、活用できる控除についてご紹介します。
各種控除の活用
まず、生命保険料控除では、生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払っている場合、年間の支払額に応じて合計で最大12万円まで所得控除を受けることが可能です。
次に医療費控除では、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分または自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が、一定額を超えた場合、所得控除が受けられます。
1年間で支払った医療費の合計から保険金などで補てんされた金額を差し引いた額が、10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超える場合、その超過分が医療費控除の金額となり、上限は200万円です。
さらに、家族を扶養している場合には対象となる家族の年齢や収入状況などに応じて控除額が異なりますが、扶養控除や配偶者控除といったものがあります。
あわせて、ふるさと納税などの寄附金控除も効果的です。ふるさと納税においては、自己負担額の2000円を除いた寄附金額が控除対象となり、所得税や住民税から控除されます。ただし、自己負担額を除いた全額が控除されるためには、所得や家族構成などに応じた上限額があります。
年収アップとともに増える税金には各種控除の活用を
年収がアップすると課税所得金額も増加し、それに応じて所得税や住民税も増える可能性があります。例えば今回の試算では、課税所得金額が300万円から400万円に上がると所得税で17万円、住民税で10万円の負担増となります。
こうした税金の増加を抑えるために、各種の控除制度をうまく活用することが大切です。扶養控除や医療費控除、寄附金控除などを取り入れることで税金が軽減でき、手取りの増加につながります。年収が上がったときこそ税金や控除制度の仕組みを正しく理解し、賢く対策を立てましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
総務省 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
