けがや病気で医療費「180万円」…「高額療養費制度」と「医療費控除」を「併用」したら負担はどこまで減る?
今回は、高額療養費制度と医療費控除の違いや、併用することでいくらお得になるかの例をご紹介します。
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高額療養費制度と医療費控除の違いとは
高額療養費制度は「収入ごとに定められた上限を超えた分の医療費を支給してもらえる制度」、医療費控除は「支払った医療費額に応じて所得から控除できる制度」です。それぞれ基準や内容が異なるので、混同しないようにしましょう。
高額療養費制度の概要
高額療養費制度は、実際に支払った医療費額が国で定められている所得に応じた1ヶ月(その月の1日から月末まで)の上限額を超えた場合に、超過分を受給できます。ただし、保険適用外の医療費や入院時の食費、差額ベッド代などは対象外です。
上限額の基準は、69歳以下か70歳以上で異なっており、被用者保険(※)に加入している69歳以下の上限額は表1の通りです。
※被用者保険:民間企業や公務員などが加入する健康保険のこと
表1
| 標準報酬月額 | 1ヶ月の上限額 |
|---|---|
| 83万円~ | 25万2600円+(保険適用前の医療費総額-84万2000円)×1% |
| 53万円~79万円 | 16万7400円+(保険適用前の医療費総額-55万8000円)×1% |
| 28万円~50万円 | 8万100円+(保険適用前の医療費総額-26万7000円)×1% |
| 26万円以下 | 5万7600円 |
| 住民税非課税者 | 3万5400円 |
出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」を基に筆者作成
保険適用前の医療費総額とは、3割負担などの健康保険が適用される前の金額です。また、標準報酬月額は税金が引かれる前の手当も含めた給料額を一定額ごとに分けた「報酬月額」に当てはめた金額で、給料が高いほど高くなります。
例えば、標準報酬月額30万円の人(69歳以下)が保険適用前の金額で40万円の医療費が発生した場合、上限は8万1430円になります。
実際に支給されるのは上限を超過した実負担分です。同ケースで3割負担だったとすると12万円の医療費を支払っており、差額の3万8570円が支給されるでしょう。
医療費控除の概要
医療費控除は、1年間で実際に支払った医療費が基準を超えていた場合に、税額計算時の所得から控除してもらえます。また、保険診療だけでなく、治療目的で支払った交通費や市販薬代、出産費用なども対象になる場合があります。
控除額は最大200万円です。高額療養費制度は1ヶ月(その月の1日から月末まで)が基準ですが、医療費控除は1年間が基準になるため間違えないようにしましょう。
医療費控除が適用される条件は以下の通りです。
・その年の1月1日~12月31日で実際に支払ったもの
・自分もしくは同一生計の配偶者や親族のために支払っているもの
控除される金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険金や高額療養費などで補填された金額-10万円(所得が200万円未満なら総所得金額の5%)」です。
高額療養費制度との併用も可能ですが、制度により受給した金額分は医療費控除に含みません。
医療費控除と高額療養費制度を併用した場合でどれくらい負担は減る?
今回は以下の条件で2つの制度を併用したときの負担の軽減度合いを試算しましょう。
・保険適用前の金額で60万円の医療費が合計3ヶ月分発生した
・標準報酬月額は35万円
・高額療養費制度における多数回該当は考慮しない
・所得は200万円を超えている
まず、今回のケースだと、高額療養費制度の上限額は1回につき8万3430円です。3割負担だと月の医療費は18万円なので、差額の「9万6570円×3回」の合計28万9710円を受け取れます。
年間で支払った金額と高額療養費制度による支給金額を医療費控除に当てはめると「54万円-28万9710円-10万円」で15万290円の所得控除を受けられるでしょう。
高額療養費制度と医療費控除は併用できる
高額療養費制度と医療費控除は併用できます。高額療養費制度では1ヶ月(その月の1日から月末まで)の医療費のうち、上限を超過した分の負担を軽くできます。医療費控除は、1年間で支払った医療費を基に所得から控除可能です。
そのため、どちらかの制度を利用するよりは、併用した方が金銭的負担は軽減できるでしょう。今回のケースだと、高額療養費制度で28万9710円の受給しつつ、15万290円の所得控除も受けられる試算となりました。
多額の医療費を支払った際は、両制度の基準に合致していないか調べるとよいでしょう。
出典
厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
