転職で通勤手当が「月15万円超」になった夫。非課税分を超えると「給与扱い」らしいけど、引かれる“社保・税金”の額はどのくらい? 負担額を試算
本記事では、非課税となる通勤手当の上限金額と、上限を超過した場合の税額計算について確認してみましょう。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
通勤手当が「非課税」となる限度額は?
まず、通勤手当に関連する税法を確認しておきましょう。国税庁タックスアンサーによると、「役員や使用人などの給与所得者に通常の給与に加算して支給する通勤手当や通勤定期券などは一定の限度額まで非課税」とされています。
これは通勤手当は、従業員が仕事をする上での必要不可欠な支出であるとみなされるためです。
ここでの「一定の限度額」とは現在「1ヶ月あたり15万円」と規定されており、これ以上の通勤手当を受け取っている場合は、超過額分が給与扱いとなり、税金が徴収されます。
また、通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合にのみ通勤手当が非課税となるため、例えば新幹線のグリーン席を使用した分の料金は、非課税制度の対象外となることも押さえておきましょう。
例えば豊橋駅(愛知県)から東京駅まで新幹線(普通席)を利用して通勤している場合、JR東海のサイトによると、1ヶ月分定期券の金額は20万5060円です。
この金額が、全て勤務している会社から毎月の通勤手当として支給されているとすると、課税対象となる超過額は20万5060円-15万円(非課税枠)=5万5060円となります。この5万5060円は非課税の通勤手当としてではなく「給与」として扱われるため、所得税、住民税、社会保険料の天引き対象となります。
通勤手当が「月に20万円」の場合、追加で源泉徴収される税金・社会保険料の額は?
ここからは、額面年収600万円の会社員(40歳以上、扶養家族は配偶者と子ども1名)が、年収とは別に通勤手当が月額20万円支給されていると仮定した場合、増加する源泉徴収額はどのくらいになるのかを計算していきます。まず、通勤手当の課税部分を計算します。
月額通勤手当20万円-非課税限度額15万円 = 5万円
課税対象となる通勤手当は「月々5万円」となるため、年間では5万円×12ヶ月=60万円が課税所得に加算されることになります。これにより、額面年収は600万円+60万円=660万円として扱われます。
このとき、1年間に追加で支払う各種の税金等は以下の通り計算できます。
▼社会保険料
健康保険料(介護保険料含む)の負担率:11.5%%(東京都)で、労使折半なので5.75%
厚生年金保険料の負担率:18.3%%の労使折半なので、9.15%
雇用保険料の負担率: 一般の事業の場合、賃金総額の0.55%
合計の負担率は5.75%+9.15%+0.55%=15.45%
60万円(給与増額分)×15.45%(社会保険料負担率)=9万2700円
▼所得税・復興特別所得税は除く
60万円(給与増額分)-9万2700円(社会保険料の増額分)×10%(税率)=5万730円
▼住民税
60万円(給与増額分)-9万2700円(社会保険料の増額分)×10%(税率)=5万730円
これらの負担額を合計すると19万4160円、給与増額分60万円の30%以上となり、かなりの額になっていることがわかります。
日本において毎月の通勤手当が「15万円」を超えることは非常にめずらしいと思われますが、該当する場合は家計にも大きく影響します。ライフプランニングをする際は、忘れずに計算しましょう。
まとめ
通勤手当が「月額15万円」を超える場合、超過分は給与として扱われるために課税対象となり、手取り額に影響を与えます。新幹線通勤など、高額な通勤費がかかる場合は注意が必要です。
急な引っ越しなどで高額な通勤手当を受け取るようになった場合は、家計にも大きく影響します。ライフプランニングをする際は、増額分の税金・社会保険料について、忘れずに計算するようにしましょう。
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
協会けんぽ 被保険者の方の健康保険料額(令和7年3月~)
雇用保険料率 令和7年
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
