パートで働いています。「社会保険に入ると手取りが減る」と聞きましたが、一番手取りが多くなる収入ラインはどこなのでしょうか?
本記事では、「手取りが一番多くなる収入ライン」をテーマに、社会保険の加入条件や扶養制度との関係について解説します。
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社会保険に入ると、なぜ手取りが減るの?
社会保険に加入すると、給与から保険料(健康保険・厚生年金)が引かれるため、実際に手取りが少なくなることがあります。パート勤務でも、条件を満たせば社会保険に加入しなければならず、その瞬間に損した気分になる方が多いのです。
例えば、月収10万円の方の場合、標準報酬月額が9万8000円(令和7年度、東京都の場合)となり、健康保険料や厚生年金保険料を合計して約1万5000円(40歳以上の場合)が給与から控除されることがあります。
これは、健康保険と厚生年金がそれぞれ給与の一定割合で保険料を徴収しているためで、会社と労働者が半分ずつ負担します。その結果、手取りは約8万5000円になる場合もあります。
しかし、社会保険に入ることで得られるメリットも多くあります。病気やけがで働けないときに傷病手当金や出産手当金が受け取れたり、将来受け取れる厚生年金の受給額が増えたりなど、将来への備えとしては安心できる制度です。
社会保険の「106万円の壁」って何?
パート勤務者でも、一定の条件を満たすと社会保険に加入する必要があります。これが「106万円の壁」と呼ばれる基準です。2025年時点では、以下のすべてに当てはまると社会保険の対象になります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月収が8万8000円以上(年収換算で約106万円)
・雇用期間が2ヶ月以上の見込み
・学生ではない
・勤務先の従業員数が51人以上
つまり、年収が106万円を超えていなくても、月収が8万8000円以上かつ週20時間以上働いていれば加入義務の対象になることがあります。
なお、「123万円の壁」「160万円の壁」なども耳にするかもしれませんが、これらは所得税の扶養控除や配偶者控除の基準です。社会保険の加入義務とは異なるため、混同しないよう注意しましょう。
一番手取りが多くなる収入ラインはどこ?
では、「一番手取りが多くなる収入ライン」はどこなのでしょうか?実際には、以下のような考え方が基本になります。
・年収103万円以下
所得税がかからず、扶養控除も満たすため最も手取りが高いラインのひとつです。
・年収106万円未満かつ週20時間未満
社会保険の加入義務がなく、配偶者の扶養内に収まります。
・年収130万円未満
社会保険上の扶養内です。保険料を支払う必要がなく手取りが安定します。
手取りを最大化したいなら、“年収103万〜106万円未満”が目安となります。社会保険や所得税・扶養控除の条件を避けながら働くことで、負担を抑えつつ収入を得られるバランスが取りやすくなります。
したがって、年収103万〜106万円未満の間で、週20時間未満に抑えて働くことが、手取りベースでは一番得をしやすいラインといえます。
勤務先によっては労働時間やシフトの調整が難しい場合もありますし、「将来の年金を増やしたい」「福利厚生を活用したい」といった希望があるなら、あえて社会保険に加入して働く方が有利なケースもあります。
ただし、106万円の壁と呼ばれる賃金要件は2026年10月に撤廃される予定で、週20時間以上勤務する労働者は、勤務先の規模に関わらず原則として社会保険の加入が義務付けられます。2027年10月には事業所規模の要件も撤廃されるため、今後はこれらの制度改正を考慮して働き方を検討する必要があります。
自分に合った働き方を見つけよう
「手取りをなるべく多くしたい」と思うのは当然ですが、それだけで働き方を決めてしまうと、後々の保障や老後の年金に差が出る可能性もあります。
社会保険に加入すると保険料の負担が発生して手取りが減りますが、その分、将来に向けた安心材料が増えるのも事実です。目先の手取りだけでなく、長い目で見た働き方や家族との生活スタイルを考えたうえで、「自分にとって一番バランスの取れた収入ライン」を見つけていくことが大切です。
まずは今の働き方が、どのラインにあたるのかを確認してみましょう。そのうえで、収入を調整するのか、社会保険に入って保障を得るのか…… どちらを選ぶにしても、自分に合った選択ができれば、安心して長く働くことができるはずです。
出典
厚生労働省 社会保険適用特設サイト パート・アルバイトのみなさま
全国健康保険協会(協会けんぽ)令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
