年末調整で「保険料10万円」の証明書を提出→「税金が10万円安くなる」と勘違いしていたことが発覚! 会社員「年収500万円」が、実際に“手取りが増える”金額の計算方法とは?

配信日: 2025.08.30
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年末調整で「保険料10万円」の証明書を提出→「税金が10万円安くなる」と勘違いしていたことが発覚! 会社員「年収500万円」が、実際に“手取りが増える”金額の計算方法とは?
生命保険に入っている会社員は、年末調整で生命保険料控除を申告するための手続きをします。中には「控除される金額が、そのまま戻ってくる」と期待して、年末調整の後に戻ってくるお金が思ったより少ないとがっかりした人もいるかもしれません。
 
年末調整で申告する「所得控除額」の分、そのまま手取りが増えるというわけではありません。
 
本記事では、「控除額」と「実際に戻ってくるお金」の間に差が生まれる理由や、その仕組みを分かりやすく解説します。年収500万円の会社員をモデルケースに、生命保険料控除でいくら手取りが増えるのかを具体的に計算していきましょう。
大垣はち

FP2級

生命保険料控除で、実際に戻ってくるお金は?

年末調整の生命保険料控除で実際に安くなる税金の額は、以下の計算式で求められます。
 
安くなる税金の額=所得控除額×税率
 
多くの人が勘違いしがちですが、年末調整の書類に記載する「所得控除額」そのものが、全て戻ってくるわけではありません。この計算式を理解するため、「所得控除額」と「税率」について理解しておきましょう。
 

「所得控除額」と「税率」とは?

生命保険料控除で戻ってくるお金の計算に必要な、「所得控除額」と「税率」について解説します。
 

所得控除額とは?

所得控除額とは、国税庁が定めた計算ルールに基づき、支払った保険料から算出される金額のことです。具体的には、図表1の計算式を使います。
 
図表1

年間の支払保険料額 所得控除額
2万円以下 支払保険料等の全額
2万円超、4万円以下 支払保険料等×1/2+1万円
4万円超、8万円以下 支払保険料等×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

国税庁 No.1140 生命保険料控除 より筆者作成
 
生命保険料控除には、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3区分があり、所得控除は1つの区分につき計算されます。年間の支払保険料が10万円の人の場合、所得控除額は1つの区分あたりの上限である4万円です。
 
所得税では、この3区分を合計して最大12万円まで控除できます。また、住民税にも生命保険料控除があり、所得税控除額と計算式が異なります。具体的には、図表2の計算式を使います。
 
図表2

年間の支払保険料額 所得控除額
1万2000円円以下 支払保険料の全額
1万2000円超、3万2000円以下 支払保険料等×1/2+6000円
3万2000円超、5万6000円以下 支払保険料等×1/4+1万4000円
5万6000円以上 一律2万8000円

公益財団法人生命保険文化センター 生命保険料控除制度とは? より筆者作成
 
生命保険料控除には、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3区分がありますが、本記事では、話を分かりやすくするため1つの区分のみに加入しているケースを想定して解説します。
 

「税率」とは?

税率とは、先ほどの「所得」から控除額などを差し引いた、最終的な課税対象額に対してかけられる税金の割合です。所得税の税率は所得に応じて5%~45%で変動しますが、住民税は多くの場合、一律10%です。
 

年収500万円・保険料10万円の人は、いくら戻ってくる?

所得控除額と税率を理解したところで、具体的なモデルケースを活用して実際に安くなる税金の額を計算してみましょう。
 

・年収:500万円
・年間の支払保険料:10万円(新制度)
・所得税率:10%(課税所得330万円以下と仮定)
・住民税率:10%(一律)

 
所得税率は、扶養家族の有無など個人の状況によって変わるため、ここでは代表例として税率10%で計算します。
 
支払保険料10万円の場合、所得税の所得控除額は上限の4万円です。これに税率を掛けると、安くなる所得税は4000円です。
 
4万円(所得控除額)×10%(所得税率)=4000円
 
同様に、住民税の所得控除額は上限の2万8000円です。10%の税率を掛けると、翌年安くなる住民税は 2800円と計算できます。
 
2万8000円(所得控除額)×10%(住民税率)=2800円
 
最後に所得税と住民税、それぞれの安くなる金額を合計します。
 
4000円(所得税)+2800円(住民税)=6800円
 
年収500万円で年間10万円の生命保険料を支払っている人が、年末調整によって実際に安くなる金額は、約6800円であることが分かりました。
 

年末調整で、生命保険料控除の還付額を正しく理解しよう

年末調整で「思ったよりお金が戻ってこない」とがっかりしないために、「安くなる税金の額 =所得控除額×税率」という計算式を覚えておきましょう。年末調整で申告する「所得控除額」は、支払った保険料そのものではなく、国税庁が定めた計算ルールに基づき計算された金額です。
 
そして、安くなる税金は「所得税」だけでなく、翌年の「住民税」にも適用されます。自身の源泉徴収票と保険料の控除証明書を見ながら、実際に戻ってくるお金を計算してみてはいかがでしょうか。
 

出典

国税庁 No.1140 生命保険料控除
公益財団法人生命保険文化センター 生命保険料控除制度とは?
国税庁 No.2260 所得税の税率
総務省 個人住民税
 
執筆者 : 大垣はち
FP2級

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