もうすぐ子どもが生まれます。夫婦の年収は同じくらいなのですが、妻の扶養に入れている人が周りにいないので、やはり私(夫)の扶養に入れるべきでしょうか?
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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扶養には2種類ある
まず、一口に「扶養」といっても2種類あるということを整理しておきましょう。
1つめは「税法上の扶養」で、所得税・住民税の計算に影響します。簡単にいうと、子どもを扶養控除に入れることで、税負担が軽くなることを指しています。2つめは「社会保険上の扶養」で、健康保険証をどちらの親のものにするかということです。
税法上のポイント
税法上の「扶養控除」とは子どもを扶養に入れることで、入れた親の所得から一定額が控除され、その分、支払うべき所得税と住民税が少なくなります。この控除額は、年収が高いほど節税効果が大きくなります。
今回のケースでは、ほぼ同じ年収ということなので、どちらの扶養に入れても節税効果はほとんど変わりません。さらに、16歳未満の子どもは「扶養控除」の対象ではないため、すぐには税金の控除は発生しません。
社会保険上のポイント
次に、社会保険への影響から確認しましょう。
社会保険の扶養は、夫婦どちらの健康保険・厚生年金に加入するかということです。社会保険上の扶養は年収の高いほうに入れることになっていますが、「夫婦の年収差が1割以内」の場合に限り選択できます。今回のケースでは夫婦の年収が同じくらいなので、「選択できる」になります。
妻が育児休業を取得する予定ならば……
一般的には、税法上にしても社会保険上にしてもどちらの扶養に入れるかは、年収が同じという前提だけをもとに考えれば変わらないといえます。ただし、妻が出産後、育児休業を取得する予定という前提が加われば、「夫の扶養に入れると節税効果が大きい」といえるでしょう。
まず所得税上についてですが、夫の扶養に「妻」を入れることで、所得税や住民税の計算において「扶養控除」が適用され、税負担が軽くなります。扶養される妻が育児休業を取得されれば、その期間の会社からの給与が基本的になくなります。
育児休業中に支給される「育児休業給付金」は、雇用保険から支給される非課税所得です。したがって所得税や住民税の計算対象となる「所得」には含まれず、育児休業取得前に得た給与所得のみが「課税対象の所得」です。
その結果、妻のその年の給与所得が扶養の要件を満たす場合(令和7年度は所得が58万円以下)、妻を夫の「配偶者控除」の対象とすることができ、さらに控除額が大きくなります。
次に社会保険上の扶養ですが、妻が育児休業を取得されている期間中であっても会社に在籍しているため、妻自身の社会保険(健康保険、厚生年金保険)は継続されます。
さらに育児休業中は、所定の手続きをすることで、妻自身と会社負担する社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が双方ともに免除されます。それでも、この期間の保険料免除は、将来の年金額にも反映され、大きなメリットです。
子どもは、収入の多いほうの社会保険の扶養に入ることになります。今回のケースでは、奥さまが育児休業手当金を受け取っている間は、夫の収入が主となるため、夫の社会保険の扶養に入ります。
まとめ
育児休業の取得予定や将来的なキャリアプランなど、長い時間軸で夫婦の働き方をどのようにしたいのかも踏まえたうえで決めることが大切です。
今は同程度の年収であっても、子どもが16歳に達したときに、収入の増減の見込みがどうなるか、夫婦それぞれの勤務先で子育てに関する会社独自の給付金、お祝い金などがあるかという前提も含めて決めましょう。
迷ったときは、勤務先の人事・総務や健保組合に確認すると安心です。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1400 給与所得
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
