実家の母に「毎月10万円」の仕送りをしています。”扶養”に入れると50万円以上の控除を受けられると聞いたのですが、条件はあるのでしょうか?
本記事では、実家の母への仕送りと扶養控除の仕組みや必要な要件、実際にどのくらい節税できるのかについて解説します。
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目次
「50万円以上」の控除って何? 仕送りと扶養控除の仕組み
まず、「50万円以上の控除」というのは、扶養控除の制度に基づくものです。扶養控除は、家族を扶養している人の税負担を軽減するための仕組みで、対象となる親族の年齢や同居・別居の状況によって控除額が変わります。
一般扶養控除(16歳以上69歳以下):38万円
老人扶養控除(70歳以上・別居):48万円
同居老親等扶養控除(70歳以上・同居):58万円
例えば、70歳以上の母が別居している場合は48万円の控除が受けられます。さらに住民税でも控除があるため、合計すると50万円以上の控除になることもあります。
扶養に入れるための3つの条件
では、母を実際に「扶養親族」として申告するためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。大きく分けて3つの要件があります。
1. 親族の範囲に入っていること
扶養控除の対象となるのは、6親等内の血族や3親等内の姻族と決められています。実の母は当然含まれるため、この点は問題ありません。
2. 母の年間所得が58万円以下であること
扶養控除を受けるには、扶養される側の合計所得金額が58万円以下(令和7年度)でなければなりません。これは給与収入で換算すると123万円以下に相当します。
年金収入だけの場合は、計算方法が少し異なります。65歳未満なら155万円未満、65歳以上なら205万円未満であれば、所得が58万円以下とみなされます。母の収入状況をしっかり確認しておくことが必要です。
3. 生計を一にしていること
「生計を一にする」とは、常に生活費や医療費などを仕送りしている状態を指します。つまり、共通の資金で生活している必要があります。
別居していても、毎月10万円を振り込んでいるなら十分「生計を一にしている」と認められます。ただし、現金手渡しでは証拠が残らないため、銀行振込など記録が残る形で仕送りすることが重要です。確定申告や税務調査の際には、この証拠が判断材料になります。
仕送り10万円の場合、実際いくら節税できる?
毎月10万円、年間120万円を仕送りしている場合、条件を満たせば適用になる扶養控除による節税効果は無視できません。
例えば母が70歳以上で別居している場合、老人扶養親族として所得税の扶養控除額は48万円、住民税の控除額は38万円です。あなたの所得税率が20%、住民税率が10%だとすると、所得税が48万円×20%=9万6000円、住民税が38万円×10%=3万8000円で、合計13万4000円の節税になります。
母が同居しているなら、所得税58万円、住民税45万円と控除額が上がります。したがって、所得税58万円×20%= 11万6000円、住民税45万円×10%= 4万5000円となり、合計 16万1000円まで節税効果が高まります。
以上のことから、年間120万円の仕送りの総額と比べれば控除額は一部にすぎませんが、負担を減らすには十分意味のある金額と考えられるでしょう。
親への毎月10万円の仕送りは賢く扶養控除を活用しよう
実家の母への仕送りを扶養控除として活用すれば、毎年10万円前後の節税効果が期待できます。ただし、「母の所得が58万円以下」「仕送りは銀行振込など記録が残る方法で行う」「年齢や同居の有無によって控除額は変わる」の3点を忘れないようにしましょう。
これらを押さえて制度を正しく理解し活用することで、仕送りが単なる支出で終わらず、節税効果として家計にも役立ちます。判断が難しい場合は、税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのも安心です。計画的に進めれば、家族への支援と自分の家計の安定を両立させることができるでしょう。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
