年間の医療費がギリギリ「10万円」に届きません。医療費控除はやはり諦めなければならないですよね?

配信日: 2025.09.26
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年間の医療費がギリギリ「10万円」に届きません。医療費控除はやはり諦めなければならないですよね?
医療費控除を受けるためには、1年間の医療費負担額が「10万円」を超えなければならないことをご存じの方は多いでしょう。では、“ギリギリ”10万円に満たない場合でも、やはり諦めなければならないのか、改めて医療費控除を受けるために条件を確認しておきましょう。
宮﨑真紀子

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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諦める前にチェックする3つのこと

「手術をした」「歯の治療費が高額になった」など医療費がかさんだときに、頭に浮かぶのは“10万円”の数字です。“年間に支払った医療費が10万円を超えたら、確定申告時に医療費控除が使える”ことは認知度が高いです。
 
この制度、本来の算式は下記のようになっています。
 
(控除を受けようとする年中に支払った医療費の総額-保険金などで補てんされる金額)-10万円=医療費控除額(最高200万円)
 
<諦める前にチェック1>
■所得が200万円までなら、その5%の数字を当てはめる
10万円の金額ですが、所得の合計額が200万円までの方は所得合計額の5%になります。つまり所得が200万円までなら、10万円に届かなくても医療費控除は受けられる場合があるということになります。
 

その費用は控除対象かもしれません!

実際に確定申告をする際は、「医療費控除の明細書」を添付する必要があります。これは、医療保険者等から交付を受けた医療費通知を添付することで記入の省略ができます。以前は、年間の領収書を整理して明細書に記入することは至難の業でしたが、作業は随分簡略化されたので、面倒がらずに申告することをお勧めします。
 
この便利な「医療費通知」ですが、医療費控除の対象となるものがすべて反映されているわけではありません。
 
国税庁のリーフレット「医療費控除を受けられる方へ」(※1)によると、控除の対象になるものは「医師等による診療等を受けるために直接必要なもの」という判断基準になっています。頻度の高そうなものを図表1に抜粋しましたので参考にしてください。
 
(図表1)

図表1
 
通院にかかる費用などは、忘れがちですが算入できます。医療費が10万円近くかかっているのでしたら、通院回数も多いはずです。領収書がなくても「その他の医療費」として、複数回をまとめて申請できます。分かりやすい記入例が、国税庁のホームページ「医療費控除を受けられる方へ」に掲載されていますのでご参照ください。
 
<諦める前にチェック2>
■控除の対象になる項目はないか確認する
交通費や市販の風邪薬等の購入など、医療費通知には記載されていない費用を払っていることも多いので、整理してみることが大切です。
 

医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)

国税庁(※2)によると、医療費控除の特例として、令和8年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合において、その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金等により補てんされる部分の金額を除く)のうち、1万2000円を超える部分の金額(8万8000円を限度)を控除額とするセルフメディケーション税制の適用を受けることができます。
 
適用には、一定の健康診査や予防接種などを行っているという条件があり、対象となる医薬品も決まっています。また通常の医療費控除との選択制なので、併用はできません。
 
セルフメディケーション税制の要件や手続きに関して、厚生労働省のホームページに分かりやすいフローチャート(※3)がありますので参考にしてください。
 
<諦める前にチェック3>
■通常の医療費控除だけでなく、セルフメディケーション税制についても検討してみる
市販薬を購入することが多い場合、こちらの特例が使える可能性があります。対象商品の一部はマークでも識別できるので、市販薬を購入する際に商品選択の一助になるかもしれません。
 

最後に

「医療費が10万円を超えると税金が戻ってくる」といっても、年間の医療費が12万円の場合、12万円-10万円=2万円が還付されるのではなく、所得税を計算するときの課税対象金額から2万円が控除されるしくみです。共働き夫婦で、それぞれに健康保険に加入している場合でも、収入の多い方に合算して申告できますので留意しておきましょう。
 

出典

(※1)国税庁 医療費控除を受けられる方へ
(※2)国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
(※3)厚生労働省 セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
 
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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