30代会社員、友人から「ふるさと納税」を勧められましたが、年収500万円でもしたほうがいいですか?
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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ふるさと納税とは
ふるさと納税は、自分のふるさとや応援したい全国の自治体に寄附することで、寄附した自治体から返礼品をもらえる制度です。返礼品は自治体が工夫を凝らしていて、地元の食品、家電、日用品、工芸品、旅行券、体験型ギフトなど多種多様です。
また、名称は「納税」ですが、実際には、自治体への「寄附」です。一定額の寄附をすることで、寄附金額から自己負担額の2000円を除いた金額が、所得税と住民税からそれぞれ控除が受けられます。
このように「ふるさと納税」の魅力は、実質2000円の負担で、自治体の特産品をもらえる点にあります。
寄附額には上限がある
ふるさと納税で控除を受けられる金額には上限があり、超過分は全額自己負担です。上限額は納税者の収入や家族構成等により異なります。まず、ふるさと納税をする前に自分の上限額を確認することから始めましょう。自分の上限額の目安は、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」で確認できます。
たとえば、高校生・大学生の子のいない年収500万円の共働き世帯では、上限額は6万1000円です。10万円寄附しても控除を受けられるのは6万1000円で、超過分の3万9000円は自己負担になります。
一方、上限額の範囲で寄附した場合、この寄附金から2000円を引いた分が所得税と住民税から控除できます。たとえば、寄附金が5万円であれば4万8000円が所得税と住民税から控除できます。つまり、実質2000円の負担で1万5000円相当(寄附金の30%以内)の返礼品をもらえることになり、大変お得です。
自治体・返礼品の選定
自分の寄附金の上限額が分かったら、次は応援したい自治体と返礼品を選びます。応援したい自治体が決まっている方は、その自治体のホームページから返礼品を選び直接申し込めます。
決まっていない方は「ふるなび」や「さとふる」、「楽天ふるさと納税」などの、ふるさと納税の仲介サイトを利用すると便利です。自治体・返礼品、ランキングなどが掲載されていて目的別に検索できます。
これまでポイントを重視して仲介サイトを選ぶ人も多かったと思います。しかし、仲介サイト間でポイント還元を高める競争が過熱し問題となっていました。そのため、2025年10月からポイントを付与する仲介サイトを通じた寄附の募集が禁止されることになりました。今後はポイント目当ての仲介サイトの選定はできなくなります。
寄附金控除の申告
ふるさと納税による寄附金控除を受けるには、確定申告をするかワンストップ特例制度を利用する方法があります。
確定申告を利用する場合、寄附をした翌年の3月15日までに、住所地等の所轄の税務署へ確定申告をします。
その際、寄附をした自治体が発行する寄附の証明書・受領書や、専用振込用紙の払込控(受領書)、もしくは、国が指定した特定事業者が発行する「寄附金控除に関する証明書」が必要となります。所得税はふるさと納税を行った年から控除(還付)され、住民税は翌年度に控除されます。
一方、ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内であれば、控除に必要な確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用できます。この制度を利用した場合、自治体が発行する寄附の証明書・受領書などは必要ありません。
ふるさと納税を行う際、納税先の自治体へ「ワンストップ特例申請書」を提出することで足りますので手続きがシンプルになります。
なお、寄附金を支払った日が寄附を行った日とみなされるため、年末ギリギリに寄附することは避けたほうがいいでしょう。
また、ふるさと納税ワンストップ特例の申請を行った場合、所得税からの控除は行われず、その分も含めた控除額の全額が、翌年度の住民税から控除されますので注意しましょう。
まとめ
ふるさと納税は、自治体に寄附(上限あり)することで、実質2000円の負担でさまざまな返礼品を受けとれます。ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告をせずに控除を受けられますので手続きがシンプルになります。
また、10月からポイントを付与する仲介サイトを通じた寄附の募集が禁止されることになりましたが、依然としてお得な制度であることは変わりありません。興味がある方は、ふるさと納税を検討してみましょう。
出典
総務省自治税務局市町村税課 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)
総務省 ふるさと納税ポータルサイト 税金の控除について
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
