来年から「独身税」が開始? すでに「子ども拠出支援金」を月1000円払ってるのに…これって“二重取り”にならないのでしょうか?
ところが、すでに「子ども・子育て拠出金」という別の制度も存在しているのをご存じでしょうか。名前がよく似ているため、「すでに拠出金があるのに、さらに支援金? 二重取りでは?」と疑問に思う人も少なくありません。
本記事では、この2つの制度の違いや、二重取りの有無について解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士
「子ども・子育て拠出金」と「支援金」の違いとは?
「子ども・子育て拠出金」(以下「拠出金」)と「子ども・子育て支援金」(以下「支援金」)は、いずれも子育て支援を目的とした制度ですが、仕組みや負担者が異なります。
子ども・子育て拠出金の概要
拠出金は、1972年度に創設されたもので、2015年から現在の名称に変更され企業が全額負担する形になっており、従業員に直接の負担はありません。企業や事業主が負担する税金で、主な使い道としては以下の通りです。
・児童手当の支給
・放課後児童健全育成事業
・企業主導型保育事業や延長保育事業
など
上記のほか、働きながら子育てをする親を支援する各種制度の財源にも充てられています。
子ども・子育て支援金の概要
支援金は、企業と従業員で費用を分担して徴収される新しい制度で、2026年度から段階的に開始されます。主な使い道としては以下の通りです。
・児童手当を高校生年代まで延長、第3子以降は3万円に増額
・出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金
・こども誰でも通園制度など
制度の目的は、少子化対策と子育て世帯支援であり、全世代で財源を支える仕組みとして導入されます。
月1000円の拠出金を企業が負担している場合、支援金の従業員負担はいくら?
拠出金は、従業員の標準報酬月額に応じて計算され、企業が全額負担します。例えば、標準報酬月額30万円の場合、2025年度の拠出金率0.36%をかけると月額1080円となる計算です。
支援金は、全世代・全経済主体で子育てを支えることを目的とした新制度で、企業と従業員が折半して負担します。
従業員1人の負担額は段階的に増え、2026年度は月約250円(年間3000円)、2027年度は月約350円(年間4200円)、2028年度には月約450円(年間5400円)の見込みです。
徴収対象は健康保険、国民健康保険、共済、後期高齢者医療保険加入者で、所得に応じて計算されます。単身者でも被保険者1人あたりで負担し、共働き家庭では夫婦それぞれが支払う場合もあります。
従業員は二重取りにならないが、企業の負担は増える
拠出金は企業が全額負担するため、従業員の給与から差し引かれることはありません。支援金で初めて直接の負担が発生するため、二重取りにはなりません。
一方、企業は拠出金に加え支援金も折半で負担するため、総コストは増加します。特に人件費の割合が高い中小企業では、影響が大きくなると考えられます。制度自体は社会全体で少子化対策を支える仕組みであり、従業員負担の発生はその一環として理解することが重要です。
まとめ
2026年4月から始まる子ども・子育て支援金制度は、「独身税」と呼ばれることもありますが、少子化・人口減少はわが国が直面する大きな課題です。その財源を社会全体で支える制度であることから、目的や仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
出典
こども家庭庁 子ども・子育て支援拠出金事業について
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度について
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度の創設
執筆者 : 村吉美佳
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士
