パートで週20時間ほど働いています。昨年から厚生年金に加入しましたが、手取り額はどれくらい減るのでしょうか。
週20時間ほど働いている人のなかには、昨年から社会保険に加入し、手取りが減ったと感じている人も少なくありません。では、社会保険に加入する場合はどのくらい減るのか、そして加入によってどのようなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、2025年10月時点の制度をもとにその実態を客観的に解説します。
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目次
厚生年金の適用拡大で週20時間勤務のパートも対象に
かつては正社員やフルタイム勤務者が主な加入対象でしたが、制度改正により短時間労働者にも社会保険の適用が段階的に広がっています。
特に2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で週20時間以上働く短時間労働者に対して、厚生年金と健康保険に加入することが義務化されました。2025年現在、この適用範囲は維持されつつ、中小企業へのさらなる適用拡大が予定されています。
加入条件は週20時間以上の勤務、月額賃金が8万8000円以上、雇用期間が2ヶ月を超える見込みがあること、そして学生でないことが基本です。今後は企業規模や賃金要件の緩和が進められており、より多くのパート労働者が社会保険の加入対象となる見込みです。
こうした背景から、これまで扶養の範囲内で働いていた人でも、自動的に厚生年金加入となるケースが増えています。
厚生年金に入ると手取りはどれくらい減る?
厚生年金に加入すると、給与から厚生年金、健康保険、雇用保険などの社会保険料が天引きされます。2025年度の厚生年金の保険料率は18.3%で、そのうち半分(9.15%)を従業員が負担します。
健康保険料率は都道府県や保険組合によって異なりますが、全国平均では10%で従業員負担はその半分の5%です。雇用保険料率は、労働者負担で0.55%となっています(一般の事業の場合)。
これらを合計すると、給与の14.7%が社会保険料として控除される計算になります。例えば、月収20万円のパート勤務者の場合、厚生年金が1万8300円、健康保険が1万円、雇用保険が1100円となり、合計で約2万9400円が差し引かれ、手取りは17万600円となります。
これまで未加入だった場合と比べると、月に2~3万円前後の手取り減になる人が多いことになります。年収換算では、25~35万円ほどの差です。
ただし、社会保険料は所得控除の対象になるため、課税所得が減り、所得税や住民税が軽減される効果もあります。結果として、実際の可処分所得の減少は社会保険料の控除額よりもわずかに抑えられます。
加入によって得られる将来のメリット
厚生年金加入は、短期的に見ると手取りが減りますが、長期的な安心が伴います。以下で、その安心について見てみましょう。
第一に、将来受け取る年金が増えます。2025年度の国民年金受給額は満額で月6万9308円ですが、厚生年金に加入すれば勤務期間や賃金に応じて上乗せされ、長期的には数十万円単位で年金額が増えることもあります。
第二に、健康保険による給付が充実します。病気やけがで働けなくなった場合の傷病手当金、出産時の出産手当金など、国民健康保険にはない各種手当が含まれており、経済的支援が受けられます。
第三に、会社が保険料の半分を負担してくれる点も見逃せません。国民年金や国民健康保険では全額自己負担ですが、厚生年金や健康保険では事業主が半分負担するため、実質的に半額で同程度の保障が得られます。
注意すべき点と今後の見通し
一方で、扶養に入っていた配偶者が社会保険に加入すると、世帯全体の負担が増える場合があります。いわゆる「106万円の壁」「130万円の壁」を超えることで手取りが減る一方、配偶者自身で保険料を支払う必要が生じます。
また、勤務先によっては健康保険料率や賞与の支給方法などが異なり、実際の手取りは人によって差があります。勤務時間や給与体系の見直しを検討する際には、収入のシミュレーションを行い、自分にとって最適な働き方を考えることが大切です。
令和7年以降も社会保険の適用範囲は段階的に広がる予定で、中小企業のパート労働者もほぼすべて加入対象になると見込まれています。加入義務を避けるのではなく、制度を正しく理解し、長期的な活用方法を考えることが不可欠です。
手取りの減少よりも将来の安心を重視しよう
厚生年金への加入によって、パート勤務者の手取りは月2~3万円程度減少する可能性があります。しかし、それは老後に受け取る年金額の増加や、病気・出産時の保障といった長期的な安心と引き換えの負担です。
短期的な損得ではなく、今後のライフプランや老後の資金計画を踏まえて検討することが大切です。勤務先の人事担当者や社会保険労務士などに相談し、自分の働き方に合った制度の活用を検討しましょう。
出典
厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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