パート先で時給「1050→1100円」になり“社会保険料”が発生しそうです。ママ友は「私は2ヶ所でパートしてるからゼロ円」とのことですが、掛け持ちなら払わなくていいのでしょうか?

配信日: 2025.10.23
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パート先で時給「1050→1100円」になり“社会保険料”が発生しそうです。ママ友は「私は2ヶ所でパートしてるからゼロ円」とのことですが、掛け持ちなら払わなくていいのでしょうか?
2025年度の地域別最低賃金が決定し、全国加重平均で過去最高の時給1121円となりました。この金額は前年度よりも66円高く、特に賃金水準が低い地域の上昇率が高くなっています。
 
パートやアルバイトで働く人の中には、時給上昇の影響で年収が上がり、社会保険料が発生して手取りが減ってしまうという人もいるかもしれません。
 
「時給が上がるのはうれしいけど、手取りが減るのは困る」と、複雑な思いを抱く人もいるでしょう。
 
そのような中、ママ友から「私は2ヶ所のパート先で働いているから時給が上がっても社会保険料はゼロ円のまま」と言われると、「そんなことある?」「だとすると私との手取りの差はどれくらいになるの?」と疑問がわくかもしれません。
 
本記事では、最低賃金の引き上げによる影響、社会保険の加入条件、そして実際の手取り額の変化について、具体的なケースを交えて解説します。
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最低賃金の引き上げによる影響

2025年度の最低賃金の改訂により、自治体の中には最低賃金の時給が80円程度上昇するといった地域もあります。仮に1日8時間、月に20日働いている人の時給が80円上がれば、80円×8時間×20日で、1万2800円が月の給料の上昇額です。
 
これにより、今まで社会保険料を支払わなくても良かった人が、賃金上昇によって保険料の支払い対象となる場合もあるでしょう。
 

社会保険の加入条件とケース比較

パートやアルバイトで働く人は、以下の全ての条件を満たす場合に社会保険料を負担しなければなりません。


・従業員数51人以上の企業で勤務
・労働時間が週20時間以上
・月額で8万8000円以上稼ぐ(年収換算で約106万円以上)
・雇用期間が2ヶ月を超える
・学生ではない

一方、本ケースのママ友の「2ヶ所のパート先で働いているから社会保険料がゼロ円」というのは、収入を分けている場合に起こります。
 
例えば、片方で年収80万円、もう片方で40万円なら、合計では月換算で8万8000円以上ですが、社会保険の加入要件は「勤務先ごと」に判定されます。そのため、この場合はどちらのパート先においても個別にみると収入が月8万8000円未満のため加入対象外です。
 
なお、将来的には2ヶ所で働いていても合算した給料で社会保険加入要件が判断されるようにルールが変わる可能性はあります。また、現在2ヶ所で働いていて社会保険料の負担がない場合でも、合計年収が130万円を超えると、今度は配偶者の扶養から外れ、配偶者の手取りが減る可能性があるので注意しましょう。
 

社会保険料はどれくらいかかる?

それでは、時給が上がり社会保険料の負担が発生した場合、どれくらい手取りが減るのか計算します。なお、賃金上昇前も後も、勤務先の企業規模などの給料以外の社会保険の加入要件を満たしているものとします。
 

【前提(賃金上昇前)】

・時給:1050円
・勤務時間:1日4時間、月20日勤務

 

【前提(賃金上昇後)】

・時給:1100円
・勤務時間:1日4時間、月20日勤務

 
この前提において、賃金上昇前後の月額の給料は次の通りです。


・前:1050円×4時間×20日=8万4000円
・後:1100円×4時間×20日=8万8000円

賃金上昇前の場合、社会保険料は引かれませんので、毎月の手取りは8万4000円です。しかし、昇給後は社会保険料が発生します。東京都の場合、月給が8万8000円の場合は健康保険料として月額約4000円、厚生年金保険料として月額約8000円、合わせて約1万2000円の社会保険料が発生します。
 
つまり、手取りは約7万6000円程度になりますので、賃金上昇前の手取り額8万4000円を下回ってしまいます。
 

社会保険に加入するメリット

社会保険料の支払いは発生しますが、社会保険に加入するメリットもあります。最大のメリットは、万一のときに生活を支える公的な保障を受けられる点です。
 
まず、厚生年金に加入すれば、将来の年金額が国民年金のみの場合より増え、老後の生活にゆとりが生まれます。また、病気やけがで働けなくなったときには「傷病手当金」、出産の際には「出産手当金」が支給され、休業中の収入を一定程度カバーしてくれます。
 
さらに、加入者が亡くなった場合には、条件を満たせば遺族厚生年金が上乗せされ、国民年金のみの場合よりも手厚い保障が受けられます。
 

まとめ

最低賃金の引き上げにより、パートやアルバイトとして働く人の月収が増加し、社会保険の加入条件を満たすケースがあります。
 
本ケースのママ友のように、複数の勤務先で働くことで社会保険料を回避する方法もありますが、今後の制度の改変によっては変わりうるという点、年収130万円を超えれば配偶者の扶養から外れるという点に関しては注意が必要です。
 
また、社会保険に加入すると手取りは減りますが、将来の年金や医療保障などのメリットがあります。自分の価値観やライフスタイルに合わせて、社会保険への加入を検討しましょう。
 

出典

厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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