“所得税”が逆に「もらえる」!? 高市早苗氏の新施策案「給付付き税額控除」って何?実現可能性は?最新動向を解説
現代の物価高対策などを背景に協議が行われた「給付付き税額控除」とは何なのか、実現する可能性はあるのか、政党の動向とともに解説します。
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「給付付き税額控除」の実現に向けて3党首が会談
2025年9月25日に行われた自民党・公明党・立憲民主党の3党首による会談にて、「給付付き税額控除」実現に向けた具体的な制度設計に着手することが決定しています。この施策は、低所得者ほど消費税の負担が相対的に重くなる「消費税の逆進性」への対策として登場しました。
消費税は所得にかかわらず一定の税率が適用されます。高所得者は所得の一部を貯蓄や投資に回すことができるため、消費に占める割合が小さく、結果として所得全体に占める消費税の負担は低くなります。
対して低所得者ほど生活必需品への消費割合が高く、収入の多くを消費に充てる必要があります。つまりこの現象は、「高所得者がより多くの税を負担すべき」という累進課税の理念に反しているのです。累進課税は所得税において実現していますが、消費税にはその逆の現象が起こっていることになります。
“税金なのに現金給付”の仕組みとは? どんなメリットがある?
まず税額控除は、計算された所得税(あるいは住民税)から一定額を直接引くという制度です。
通常の税額控除は「税金を払う人」が対象ですが、これに給付を加えて「税金を払う必要がないほど所得が低い人」にも控除額相当の現金を給付する仕組みです。つまり、
・所得が高い人は税額控除で支払う税金が減る
・所得が低い人は控除しきれない分を現金で支給もしくは全額給付される
という仕組みになります。たとえば立憲民主党が提案する「4万円給付案」では、国民に一律4万円を給付したうえで、所得に応じて最終的な給付額を調整する仕組みを検討しているようです。
4万円とは1年間の食料品にかかる消費税負担額を参考に設定したもので、マイナンバーとひも付いた公金受取口座に支給が検討されています。
この制度のメリットは、定額減税や一律給付と異なり、低所得者層や非課税世帯にも支援が行き届く点です。高所得者への課税も阻害しないため、より公平を目指す制度と言えるでしょう。
日本での実現可能性は? 諸外国の事例から考察
制度設計に着手した段階であることから具体的な形は見えてこないものの、実現の可能性はそれなりに高いと考えられます。
2012年にも「社会保障と税の一体改革」として導入が検討されましたが、給付の対象となる低所得者の所得把握が難しいなどの理由で見送られました。現在は、マイナンバーを活用して「資産と所得の把握」が実現する可能性があるため、2012年と比べて変革の糸口は見えてきているのかもしれません。
海外では、アメリカの「EITC(勤労所得税額控除)」やイギリスの「ユニバーサルクレジット」といった所得支援制度がすでに運用され、貧困削減や生活支援に一定の成果を挙げています。
ただし、制度が複雑なため周知不足や運用に時間がかかった例もあり、日本でも同様の課題が懸念されます。手続きの簡素化や周知方法の検討も重要な課題となるでしょう。
まとめ
物価高や燃料費高騰の影響が家計を直撃している現在、給付付き税額控除について注目している方もいるのではないでしょうか。
野党の政策提案も与党側の制度設計に影響を与える可能性があるため、今後の政党間の議論を注視する必要があります。「物価は上がるのに収入は増えない」「これからの将来の出費が不安」と感じる方も、今後のために政治の動きには目を通しておきたいところです。
出典
自由民主党 高市早苗新総裁を選出初の女性総裁が党再建への重責担う
立憲民主党 「立憲・自民・公明で党首会談。給付付き税額控除、ガソリン税の暫定税率廃止、政治とカネの問題の協議を加速することで合意」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
