妻の年収は130万円。子どもを扶養に入れると住民税がかからないと聞いたのですが、実際どのくらい手取りが増えるのでしょうか?
しかし、その基準は単純に「130万円以下なら非課税」というわけではなく、世帯構成や扶養の有無によって異なります。国税庁や自治体の公的基準をもとに、住民税の仕組みと実際の手取りへの影響を確認していきましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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目次
住民税の「非課税」には明確な基準がある
住民税(市町村民税・都道府県民税)は、前年の所得に応じて課税されます。非課税となる人の主な条件は、以下のように定められています。
所得税の場合は、16歳未満の子どもは扶養親族に含まれませんが、住民税の場合は16歳未満の子どもも扶養親族に含まれます。
本人が扶養親族を持つ場合
「合計所得金額が 35万円 ×(本人+扶養人数)+21万円 以下」
給与所得者の場合、「給与所得控除」を差し引いた後の金額で判定します。
「年収130万円の壁」とは別
多くの方が混同しがちなポイントとして、「130万円の壁」という言葉があります。これは主に社会保険(健康保険・年金)の扶養の基準を指しており、住民税の非課税基準と混同しないように注意しましょう。
・130万円の壁:健康保険・厚生年金の扶養に入れるかどうか
・住民税の非課税:課税所得が一定額を下回るかどうか
つまり、年収130万円を超えると社会保険料を支払う必要は出てきますが、住民税の非課税かどうかは、扶養人数によって変わるという点を理解することが大切です。
妻が「子ども1人」を扶養した場合のシミュレーション
具体的な例でシミュレーションして確認しましょう。
(1)給与所得控除を考慮した計算
給与収入130万円の場合、給与所得控除は65万円(令和7年12月から)ですから、所得金額は「130万円-65万円=55万円」となります。
(2)非課税判定の基準
子ども(扶養親族)1人を持つ場合、非課税となる合計所得の上限は、「35万円×2人+31万円=101万円」となり、 75万円はこの範囲内に収まるため、住民税は非課税です(練馬区の場合)。なお、この算式は自治体によって異なりますので、お住まいの自治体公式サイトで確認してください。
(3)結果
・所得税:基礎控除95万円(令和7年12月から)を引くと課税所得はゼロ(所得税非課税)
・住民税:91万円以下のため非課税
このことから、年収130万円で子どもを扶養している妻は、住民税・所得税ともにかからないことが計算上、確認できました。
非課税でも「社会保険料」は別途控除される
住民税が非課税であっても、社会保険料(健康保険・厚生年金)がかかる場合があります。妻が勤務先で社会保険に加入している場合、給与から自動的に天引きされます。
月収が約10万8000円を超えると(=年収約130万円超)、勤務先や勤務時間によっては、夫の扶養から外れて自分で保険料を支払う必要があります。住民税が非課税でも、社会保険料を支払うようになると手取りが減少するケースも考えられます。
非課税世帯になると受けられる支援
「非課税世帯」になると、さまざまな行政支援が受けられる下記のようなメリットがあります。
・国民健康保険料の軽減
・高等教育無償化(大学授業料の免除など)
・医療費助成・児童手当の加算
所得制限がある給付制度では、「住民税非課税世帯」が有利になるケースはよく目にします。ただし、これも自治体によって基準が異なるため、お住まいの自治体ホームページで確認が必要です。
まとめ
まとめとして、年収130万円の妻が子どもを扶養する場合、所得控除を考慮すると住民税・所得税は非課税になるケースが多いです。ただし、社会保険の扶養基準(130万円の壁)とは別の話であり、保険料の負担が増えることで「手取りが増える」とはかぎらないことを認識しておきましょう。
非課税だから、即「お得」と単純に考えるのではなく、「税金」「社会保険」「世帯全体の手取り」の3点を総合的に見て判断することが大切です。家計を守るためには、「収入が増えたときに何の控除が変わるのか」「非課税になることでどんな支援を受けられるのか」を理解しておくことが、賢いお金とのつきあい方といえるでしょう。
出典
練馬区 住民税が課税されない場合
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者
