50歳・独身、昇進して年収が850万→1000万円に。しかし、手取りは640万→730万とあまり増えていません。扶養があれば、もっと手取り額は増えるのでしょうか?

配信日: 2025.11.08
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50歳・独身、昇進して年収が850万→1000万円に。しかし、手取りは640万→730万とあまり増えていません。扶養があれば、もっと手取り額は増えるのでしょうか?
「昇進や昇給で年収が上がったのに、思ったほど手取りが増えない……」 そのような経験をした人は多いのではないでしょうか。
 
所得税や住民税、社会保険料などの負担が増えることで、年収アップ分が実感しにくくなるのです。では、扶養家族がいる場合や、控除を活用できる人は、手取りをもう少し増やすことができるのでしょうか。
 
本記事では、年収が上がったときの税や社会保険の仕組みを整理しながら、扶養による手取りの変化を解説します。
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年収1000万円になると増える「見えない負担」

年収が上がると所得税や住民税が累進的に上昇するだけでなく、社会保険料も一定の上限まで連動して増加します。
 
例えば年収850万円から1000万円に上がる場合、給与所得控除は年収850万円超で一律195万円となるため、課税対象となる所得が増加します。さらに、健康保険・年金・介護保険などの社会保険料も増えるため、年収が150万円増えても手取りがその分増加するとはいえません。
 
一般的に、年収1000万円の会社員の場合、所得税・住民税・社会保険料をすべて差し引くと、手取りはおおむね700万円前後となります。つまり、収入が増えても「税と保険料の壁」によって、昇給額の実感が得にくくなるのです。
 

扶養控除の基本を理解する

扶養控除とは、所得税を計算する際に扶養親族がいる場合、一定額を所得から差し引くことができる制度です。一般の扶養親族で38万円、同居老親等以外の者で48万円、同居老親等で58万円が控除額の目安となります。この控除によって課税所得が減るため、結果的に支払う税金が軽くなり、手取りが増える仕組みです。
 
ただし、扶養控除を受けるには条件があります。扶養親族が納税者と生計を一にしており、かつ所得が58万円(給与収入約123万円)以下であることが求められます。
 
アルバイト収入や年金収入がある場合は、その金額によって扶養対象から外れることもあります。また、税法上の扶養と社会保険上の扶養は別の基準で判定されるため、両者の違いを理解しておくことが大切です。
 

扶養を持った場合、手取りはいくら増える?

仮に、年収1000万円の独身者が、収入のない家族を扶養に入れた場合を考えてみましょう。所得税と住民税を合わせた実効税率を約20%と仮定すると、38万円の扶養控除が加われば、約7万6000円分の税金が減る計算になります。つまり、単純計算では手取りが7万円ほど増えることになります。
 
ただし、これはあくまで税金の軽減効果であり、扶養を持ったからといって手取りが大幅に増えるわけではありません。また、扶養親族に一定以上の収入がある場合は、控除が適用されなくなる点にも注意が必要です。税制改正などによって扶養の所得上限が変更されることもあるため、最新の基準を確認しておきましょう。
 

注意したい「扶養」と「社会保険」の違い

税制上は扶養に入れられても、社会保険上は扶養にできないケースもあります。例えば、扶養される人の年収が130万円を超えると、健康保険や年金の扶養から外れることが多く、その場合は自分で保険料を支払う必要が生じます。結果的に、世帯全体での支出が増える可能性もあるため注意が必要です。
 
さらに、年収が1000万円を超えると、基礎控除や配偶者控除などの所得控除の一部が段階的に縮小されるため、制度上の恩恵が小さくなることがあります。そのため単に「扶養をつければ手取りが増える」と考えるのは危険です。最新の制度や適用条件をよく理解し、個別の状況に応じて判断しましょう。
 

扶養を視野に入れて、手取り改善の可能性を探ろう

昇進や昇給で年収が上がっても、税金と社会保険料の負担が増えるため、手取りの伸びは限定的になることが多いです。ただし、条件を満たせば扶養控除を活用して所得税や住民税を減らすことができ、わずかでも可処分所得を改善できる可能性があります。
 
扶養親族の収入や制度の要件を正確に把握し、扶養に入れることで本当に手取りが増えるのか、複数のシミュレーションで確認してから判断することをおすすめします。必要に応じて専門家に相談し、自分に最も有利な制度の使い方を見つけましょう。
 

出典

国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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