大学生の娘がアルバイトで“年収150万円”になる見込み。非課税枠は「160万円」に拡大すると聞きましたが、「60万円ほど」の扶養控除はなくなってしまうのでしょうか?

配信日: 2025.11.16
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大学生の娘がアルバイトで“年収150万円”になる見込み。非課税枠は「160万円」に拡大すると聞きましたが、「60万円ほど」の扶養控除はなくなってしまうのでしょうか?
大学生の娘さんがアルバイトで年収およそ150万円になる見込みというとき、「給与収入160万円までは税金がかからない」と聞いたり、「扶養控除がなくなる」という話を耳にしたりして戸惑われる方も少なくないでしょう。
 
特に、「60万円ほどの扶養控除がなくなるのでは?」という不安は、令和7年度(2025年度)から大きく変わった税制のポイントと深く関わっています。
 
今回は、令和7年度の税制改正を踏まえて、「年収150万円になる見込みの大学生アルバイト」と「親の扶養控除」の関係を整理します。
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「年収160万円まで非課税」の意味と限界

令和7年度の税制改正では、所得税が課税されるボーダーラインが見直されました。
 
従来、年収103万円までは所得税が非課税とされていましたが、今回の改正で給与所得控除の最低保障額が65万円、基礎控除が最大95万円まで引き上げられたことにより、給与収入ベースで最大160万円程度まで非課税となる可能性が出てきました。
 
この点だけを見ると、「150万円の年収なら税金がかからないから問題ない」と安心してしまいがちですが、実はもうひとつ大切な視点があります。それが「扶養控除」の問題です。
 
親が扶養控除を受けるためには、子どもが「控除対象扶養親族」として一定の条件を満たしている必要があります。年齢や納税者と同一生計であるかどうかに加え、年間の合計所得金額が一定以下であることも要件です。
 
この合計所得金額は、給与収入そのものではなく、給与所得控除を差し引いた後の「所得金額」で判断されます。今回の改正では、扶養控除の対象となる扶養親族の所得要件は、58万円以下(給与収入ベースで123万円以下)に引き上げられました。
 

新たに創設された「特定親族特別控除」とは

こうした見直しに対応するかたちで、令和7年度の税制改正では「特定親族特別控除」という新たな制度が創設されました。これは、従来であれば扶養控除が受けられなくなるようなケースでも、一部控除を認めるという仕組みです。
 
国税庁の資料によれば、この「特定親族特別控除」の対象になる「特定親族」とは、納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者と、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人および白色事業専従者を除く)で、収入が給与ベースで123万円超188万円以下の人です。
 
給与所得控除を引いた後の合計所得金額が58万円超123万円以下であることが要件となります。
 
この要件を満たすと、親は段階的に控除を受けることができます。例えば、対象となる子どもの合計所得金額が58万円超85万円以下であれば、従来の特定扶養控除と同額の63万円の控除が認められます。85万円を超えて123万円までは、控除額が徐々に減額される仕組みです。
 
つまり、今回の事例における大学生の娘さんの年収が150万円程度であれば、給与所得控除を差し引いた所得金額は85万円前後になると想定され、従来の特定扶養控除の代わりに「特定親族特別控除」が適用される可能性があるということです。
 

年収150万円の大学生アルバイトと「60万円ほどの控除」の関係

前述の通り、大学生の娘さんの年収が150万円になる場合、給与所得控除を引いた後の所得は約85万円となります。この金額は、「特定親族特別控除」の控除対象となる合計所得金額58万円超123万円以下の範囲に該当します。
 
そのため、親には一定の控除が残る可能性があります。具体的な控除額については、娘さんの合計所得金額が58万円超85万円以下であれば63万円、85万円超90万円以下では61万円と、年収150万円前後であれば「60万円ほど」の水準が維持される可能性もあるでしょう。
 
一方で、娘さんの年収がさらに上がり、給与収入が188万円を超えてしまうと、控除対象から外れてしまう点には注意が必要です。
 
このように、子どもに収入があるからといってすぐに控除がなくなるわけではありませんが、所得の金額によって控除が減る、あるいは消失する可能性はあるため、事前の確認が欠かせません。
 

まとめ

アルバイト収入が150万円に達する大学生の娘さんを扶養に入れている場合でも、控除が完全になくなるとは限りません。
 
令和7年度の税制改正により創設された「特定親族特別控除」によって、58万円超123万円以下の所得金額、給与収入ベースで収入金額が123万円超188万円以下であれば、一定額の控除が認められる仕組みが整っています。
 
この制度によって、親の控除が段階的に維持される可能性があり、急に「60万円ほどの控除がゼロになる」といった不安は緩和されます。ただし、娘さんの所得金額が123万円(給与収入188万円)を超えると、控除対象外となってしまうため、今後の収入見込みは注意深く確認しておくべきです。
 
扶養に関する制度を正しく把握することで、必要以上の納税や損失を防ぐことができます。不明な点がある場合は、税理士や市区町村の窓口などで相談することも検討しましょう。
 

出典

国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)(3ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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