飲食店でバイトしている大学生の息子、年末は繁忙期で12月の給料が10万円になりそうなのですが、やはり扶養から外れますか?
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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2つの側面からの扶養について整理
年末が近づくと、「子どものアルバイト収入が増えたら扶養から外れるのでは?」という質問がよく寄せられます。図表1で、「扶養」には2種類あるということを確認しましょう。
図表1
「1ヶ月だけ10万円稼いだならば、自動的に即扶養から外れる」わけではなく、「何を基準にした扶養か」で判断が異なります。
親の所得税に関係する「扶養控除」
まず、親の所得税に関係する「扶養控除」から確認します。2025年(令和7年)から、アルバイト収入がある子どもの「所得」計算は以下のとおりです。
給与所得 = 年間の給与収入 - 給与所得控除65万円
さらに、親が扶養控除を受けるためには、子どもの所得が48万円以下(所得控除95万円-基礎控除47万円)であることが条件でしたが、2025年改正後は所得控除が95万円に統一されるため、年間給与収入が160万円以下なら親の扶養に入れることができます。
具体例で、子どもの年収がいくらまでなら扶養に入れられるか確認しましょう。
給与所得控除65万円と所得控除95万円の合計160万円までの給与収入なら、所得税上は扶養内です。したがって、子どもが12月に10万円稼いでも、年間のアルバイト収入が160万円以内なら、税法上の扶養から外れません。
社会保険上の「扶養」
次に、健康保険や年金の扶養について見てみましょう。こちらは「年間見込み収入」で判断され、会社の健康保険組合や協会けんぽが基準を設けています。
一般的には、年間収入130万円未満であれば扶養に入れ、130万円以上見込まれると外れる可能性があります。
学生の場合は130万円未満ならば扶養内でも、組合によっては基準が異なる場合がありますが、判定は「将来1年間の見込み収入」で行われるため、一時的に1ヶ月だけ収入が多くなった場合でも、すぐに扶養を外れることにはなりません。
例えば、1~11月まで各月8万円程度で、12月だけが12万円の収入があった場合でも年間収入の見込みは100万円なので、社会保険上も扶養のままで大丈夫ということです。
国民年金についてですが、日本年金機構の公式サイトでは、2025年10月から収入基準が「130万円未満」から「150万円未満」に変更になるとの記載があります。
注意が必要な場合
もし子どもが12月以降もアルバイト時間数を増やすなどで、月収が10万円以上の状態が継続するようになれば、「今後1年間の見込み収入が130万円を超える」と判断される可能性があります。その場合は、親の健康保険の扶養から外れ、本人が勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険と国民年金に加入する必要が出てくるでしょう。
この判断は勤務先や健康保険組合によって異なるため、収入増が継続する可能性が出てきたら早めに会社の人事・総務に相談するのが安心です。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
日本年金機構 19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

