今年新設された“特定親族特別控除”を申告し忘れると損するって本当? 対象になる人の条件は?

配信日: 2025.11.18
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今年新設された“特定親族特別控除”を申告し忘れると損するって本当? 対象になる人の条件は?
2025年度の税制改正で、「特定親族特別控除」が新たに設けられました。この制度は、親と同一生計にある19歳以上23歳未満の子どもを扶養する世帯を対象にした新しい所得控除制度です。
 
従来の扶養控除では、子どもの収入が増えるほど親の控除が消えてしまい、世帯の可処分所得がかえって減ることもありましたが、新制度はこうした不利益を緩和しつつ、若年層の就労を後押しする仕組みです。
 
本記事では、制度の仕組みや対象者の条件、控除を生かすためのポイントを解説します。
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制度創設の背景と家計への影響

特定親族特別控除は、若い世代の働き方を柔軟に支援するために創設されました。これまで「103万円の壁」によって、学生アルバイトやパートで働く子どもが少し働きすぎると親の扶養控除が外れ、結果的に親の税負担が増えてしまうことがありました。
 
新制度では、一定範囲内の収入増加であれば控除が段階的に適用され、親の急激な税負担増を避けられるようになりました。これにより、世帯全体でみた手取り収入の安定化が期待できる点が大きなメリットです。
 

対象者の条件と控除額

制度の対象となるのは親と同一生計にある19歳以上23歳未満の親族で、その合計所得金額が58万円超123万円以下の人です。給与収入に換算すると、およそ123~188万円以下が目安となります。
 
控除額は所得に応じて段階的に変動し、最も手厚いのは合計所得金額が58万円超85万円以下の場合で、最大63万円の控除が受けられます。85万円を超えると控除額は段階的に減少し、所得が123万円に達すると控除がなくなる仕組みです。
 
この制度により、子どもが収入を増やしても、一定の範囲までは控除が維持されるという点が従来の103万円の壁との大きな違いです。
 

申告手続きと注意点

この制度を利用するには、年末調整や確定申告で所定の申告書を提出する必要があります。2025年分の所得税から適用されるため、早めに子どもの収入見込みを把握しておくことが重要です。
 
注意が必要なのは、子どもの収入が増えることで子ども自身に所得税や住民税が発生したり、社会保険の扶養から外れて保険料負担が生じたりする可能性がある点です。
 
家計の手取り額という観点ではメリット・デメリットが混在するため、「働けば働くほど得になるとはかぎらない」という点を親子で理解しておくことが大切です。
 
また、控除を申告し忘れると、その分だけ親の税負担が増えることになります。受けられるはずの控除が適用されないのは実質的な損失といえるため、忘れずに申告しましょう。
 

家計プランにどう生かすか

新制度は子どもの働き方の自由度を高めるとともに、世帯全体の手取りを維持しやすくする役割を持っています。これまで収入の調整のために勤務時間を制限していた家庭でも、より柔軟に働ける可能性が広がりました。
 
ただし、子どもの収入増加に伴う税負担や社会保険料の増加も含め、世帯全体でどの程度の手取りが残るのかを冷静に把握する必要があります。親の控除額と子どもの手取り額を総合的に考慮し、家計全体として得になる働き方を検討することが重要です。
 

家族で制度を正しく理解し、控除を確実に受け取ろう

特定親族特別控除は、若い世代の働き方を支えつつ世帯の負担を軽減する新しい制度です。適用を受けるためには、「19歳以上23歳未満で生計を一にする親族」が「合計所得金額58万円超123万円以下(給与収入123万円超188万円以下)」であることを確認し、年末調整や確定申告で必要な申告を忘れずに行うことが欠かせません。
 
控除を活用することで、世帯の手取りを最適化しやすくなりますが、収入増に伴い子どもの所得税や住民税の負担、さらには扶養から外れることによる保険料負担の増加が生じる可能性もあるため、これらにも注意を払う必要があります。
 
制度を正しく理解し、申告漏れを防ぐことが、家計の健全な管理につながるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1177 特定親族特別控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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